Ⅳ
3人のヤンキーの自己紹介が終わり、残すはあと1人。殺の横に座っている男に視線を向けるが、彼は眠いのか三角座りをしながら、首を縦に振ってうとうとしている。
「おーい、
「……ん」
叶が起きないように、小声で呼びかける槍壱。その声に反応して瞬きを何度かすると、目を擦り大きく欠伸をする
「ごめん……寝てた」
「自己紹介、お前で最後やから」
「もうみんな終わったん」
そう言って頭を掻きながら怠そうに欠伸をする龍王。
身長は160cm後半と平均的だが、スラックスとYシャツの上に着た黒色のカーディガンと
髪型もとてもナチュラルな
“一匹狼”の言葉が似合いそうな彼は、意外と裏では女子にモテ生やされてそうな雰囲気をしている。
「あー……なんやっけ? えー、京都の? なんか頭に勝手にされてた
「おい、龍王! 適当すぎやろお前!」
「えぇ……あっ、歳はみんなと同じ18。あとなに? 好きな食べ物は、甘いの。苺とか」
寝起きで怠いのか面倒臭いのか、はたまた元々こういった性格なのか、適当に自己紹介を終える龍王。
「因みにわいら幼馴染やねん! こいつ昔からこんなぼーっとしてんねんけどな、腕はピカイチやねん。
「おい待てよ」
何やら一番強いと言う言葉が気に食わなかったのか、立ち上がり話を止める獅子神。
「とらちゃん、どしたんや?」
「龍王が一番強いってのは、聞き捨てならねぇ」
「……50勝49敗1分」
今迄の勝敗の記録をボソッと呟く龍王。それを聞いた獅子神が、笑っているのか怒っているのか眉を引くつかせながら指の骨を鳴らす。
「上等だ……決着つけようじゃねぇか」
「やだ。怠い」
「てめぇ……」
龍王に即答で断られ、苛々が募り始める獅子神。
「まあまあ、とらちゃん。時間も時間やし、寝てる子もおるわけやから、な?」
「槍壱……てめぇも混ざっていいんだぜ?」
獅子神は、槍壱にも喧嘩を吹っ掛ける。
「ええけど、とらちゃんわいに一回も勝ったことないやん」
槍壱のその言葉に対し、海堂と殺、龍王までが声を抑えながら笑う。言い返す事が出来ない獅子神は、その場に胡座をかいて座りそっぽを向く。
「さて、全員の自己紹介も終わったことやし、どないしよか?」
「そうですね……」
「寝る」
何かないかと考える春宮に対し、すぐに寝ようと目を瞑る龍王。
「まだ21時ですよ。時間合ってるかわかりませんけど」
手に持っていた
その懐中時計の蓋の内側部分には、母親である
「21時か。なんや中途半端な時間やなぁ」
頭を掻きながら悩んでいた槍壱が、思い付いたように手を軽く叩く。
「そや! アルフィーちゃん、なんか話すことあるやろ!」
「え……今はちょっと」
何やら今は都合が悪いのか、アルフィーに視線を向けると、何故か暗い森の方に1人で入って行こうとしていた。
「どこ行くんだ?」
アルフィーの服に大鎌の刃先を引っ掛けて引き止める倉本。
「え、いやちょっと探検に……」
「暗い森を? 1人で?」
獅子神に詰め寄られるアルフィー。気付けば、殺と海堂も周りを取り囲む。龍王は丁度いいやと1人目を瞑って眠り始める。
「1人だと心細いだろ? 俺たちも一緒に行ってやるよ」
転移先を誤ったことをまだ根に持っていたのか、アルフィーをひょいと担ぐと森の方へと入って行くヤンキー3人と倉本。
「あんま遠くまで行きなやー」
槍壱が彼らにそう注意すると、獅子神が『わかった』とでも言うかのように手を上げる。
――それにしても、また個性豊かな人達を連れて来たもんだ――
森の奥へ連れて行かれるアルフィーを眺める蒼空は、気が抜けたのか大きな欠伸をする。一日中、動きっぱなしで緊張も解けたせいか、どうやら身体と脳に一気に疲労がきたようだ。
「助け……助けて!! 誰か!!」
アルフィーの助けを求め泣き叫ぶ声がどんどん遠くなっていくのを聴きながら、蒼空は硬い土の上に横になり朝まで深い眠りについた。
「おやすみなさいませ、蒼空様」
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