Ⅲ
――数時間が過ぎ。
先程まで、森を照らしていた蒼い月は、雲に覆われてしまい辺りは一層と深い闇に包まれる。だが、焚火のおかげか円になって座っている蒼空たちの場所は、明るさを保っている。
しかし、その火も段々と弱くなっていた。それにいち早く気付いた槍壱は、焚火の近くで乾燥させていた薪を幾つか火にくべる。すると、火はたちまち力強さを増していった。
さて、自己紹介もいい具合に進んで後半へ。トリを飾るのは
「ほな、ちゃちゃっと自己紹介してもらおうか。“とらちゃん”」
「その呼び方やめろよ」
とらちゃんと仇名で呼ばれたリーゼントの男が、槍壱にタメ口を利く。
「ええやんけ、わいらの仲やろ? って事で、とらちゃん。声のトーン落としながらで頼むわ」
そう言って、左手の親指で華蹴の方を差す槍壱。どうやら、ラウルと戯れていた叶が眠てしまったようだ。
「わーったよ……ったく」
リーゼントの男が、
「俺は、
ヤンキーに似合わない小声で、淡々と自己紹介を終える獅子神。
改めて容姿を見てみると、黒色の瞳をした男らしい顔つきに綺麗に整えられた黒色のリーゼントが際立つ。身長も170cmと平均的ではあるが、そこいらの高校生よりかはガタイが良い。
また、“FIRE”と書かれた赤いTシャツの上には、ボタン全開のYシャツと襟詰めの学ランを着こなし、“ドカン”と呼ばれた太もも部分が太いズボンを履いた姿が、体格と相俟って様になっている。
自己紹介を終え、皆から拍手を貰った獅子神が少し照れ臭そうにしていると、隣に座っていたハーフリムのスクエア型眼鏡を掛けた不良の1人が、勢いよく立ち上がる。
「か……
唐突に立ち上がったかと思うと、名前と年齢だけボソッと呟く海堂。どうやら、自分の番が回ってくるまで緊張していたらしい。
海堂は獅子神よりか少し細身ではあるが、鍛えているのか腕にはしっかりとした筋肉がついている。
身長も180cmと高く、眼鏡を掛けた知的な顔には青色の瞳が輝く。髪は青色に染め上げた
半袖のYシャツには、青色を基調とした黄色と黒色の混ざったネクタイを結び、下は
「せやせや、忘れとったわ! こいつ結構な人見知りちゃんでな、あんま喋るん得意ちゃうねん。せやから、わいがさらっと紹介するわ。“ヨッシー”座っとき」
海堂の首に回した腕を解き、ヨッシーと仇名で呼んだ彼の紹介をし始める槍壱。
「さっきも聞いた思うけど、名前は海堂義経。えー18……やったっけ?」
コクリと頷く海堂。
「ほんで、北海道で頭張っとんねん! しかも、こいつ結構な武術の達人でな、殴ったりするより、守るんがめっちゃ強いねん。せやから周りからは、“
その呼び名が恥ずかしいのか、下を向いて顔を赤らめながら頷く海堂。
「まあ、そないな感じかな? って事で、みんな仲良うしたってな!」
海堂の紹介が終わると、彼の頭をポンポンと叩いて自分の座っていた場所へと戻った。
そして、海堂の隣に座っていた女の子が、今か今かと身体を震わせながら待っている。
「おまっとうさん! ほな、
ニッと歯を見せ笑うと、殺と呼ばれた女の子に自己紹介を促す槍壱。
「やっと、あたくしの番ですのね!」
彼女は、膝上の高さで履いた黒と水色の
「あたくしは、
片足を斜め後ろの内側に引いて、もう片方の足の膝を軽く曲げると、背筋を伸ばしたまま両手でスカートの裾を軽く持ち上げてお辞儀をする殺。
145cmと小さな身体には、Yシャツに赤い大きなリボン、その上にはベージュのカーディガンを着用している。可愛らしい小顔の鼻の辺りには少しそばかすが広がっており、それをアクセントに
髪もキャラメルブロンドに高めフロントトップの
その可愛らしい姿から
「+αで言うと、“博多の女帝”って言われとんねん。つまり、福岡の頭っちゅうことや。怒らしたら怖いで〜。まあ、ええ子やから仲良うしたってな」
「ちょっと槍壱さん!? それ言わないで下さる?! 折角、印象良くしようと説明を省いたのに!」
顔を赤らめながらむくれる殺に対し、悪戯っぽく笑う槍壱。だがそれもすぐに止めると、彼女は槍壱をどこか安心したように見つめる。
――でも、よかったですわ……また、こうして貴方様と出会えて――
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