Better late than never.
Ⅰ
パチパチッと音を立て火の粉を飛ばしながら燃える焚火。その周りを囲む蒼空たち一同は、転移後の激しい戦闘などに疲れ果て、その場でぐったりとしている。
「そや! みんな集まったことやし自己紹介でもせえへんか?」
槍壱の突然の提案に頷く一同。
「はいはーい!」
元気な声で一番早く手を上げたのは、傷だらけの自称神の少年。
「それでは皆さん、改めまして! ボクは、“知恵の神”アルフィー。年齢不詳! 訳あって、君たちをこの異世界に連れてきた張本人さ! よろしくね!」
周囲を苛つかせるウインクと決めポーズをする少年に
「え、みんな反応薄くない……?」
勝手に連れてきた挙句、厄介ごとにまで巻き込んだ本人なのだから、彼らの反応が薄いのは至極当然である。
「ほな次、わいやな」
項垂れる少年の背中を慰めるように軽く叩いて座らせる槍壱。
「よっこらしょーいちっと……どうも! えー蒼空くんには軽く自己紹介したんやけど、改めて! わいは
死んだと言う言葉が少し気掛かりではあるが、それを気にさせないほどの饒舌な大阪弁で自己紹介を終える槍壱に盛大な拍手を送る蒼空たち一同。少年は「ボクの時と違う」とぶつぶつ愚痴を吐く。
「ほな次……じゃあ、そこのスーツの……ほら、あれや! でっかい鎌投げとった兄ちゃん! 自己紹介、頼むわ!」
「あぁん!?」
慣れ合うのが嫌いなのか、槍壱に自己紹介を急に振られて嫌がる素振りを見せるヤクザの男。
「ええやないか。な?」
ヤクザの男の首に手を回し「ちょっとだけや」と少し脅し気味に同意を伺う槍壱。
「……チッ、クソめんどくせぇ。
槍壱の手を払い凭れ掛かった木から立ち上がると、名前と年齢だけを淡々と言う倉本。
「ちょい待ち、ちょい待ち。そんだけかいな。もっとこう……職業とかあるやろ?」
思わずツッコミを入れる槍壱に、面倒臭そうに自己紹介を続ける倉本。
「てめぇらが頭で考えている通り、職業はヤクザだ。それと訳あって副業で“死神”をやってる」
死神と聞いてリストを開いた蒼空は、記載された内容を読む。
――倉本恵介……倉本……あった! 職業はヤクザ。“白銀の死神”、それ以上は不明……か。そういえば、噂を耳にしたことがある。なんでも、自殺や安楽死などの依頼を請け負っているとか何とか。都市伝説……ではなさそう。それに要注意人物で全国手配されてる。こんな人物まで連れてくるなんて――
「死神……白スーツにシルバーの髪。白鞘作りのドスに先程の大きな鎌……もしかして、“白銀の死神”ですかね?」
よく観察しているのか、まるで探偵のような口ぶりで彼の正体に辿り着く春宮。
「周りの奴らが勝手に呼んでんだろ」
面倒臭そうに悪態を吐く倉本。
「わいは聞いたことないなぁ」
腕を組んで首を傾げる槍壱。
「まあええわ。名前も聞けたことやし、よろしゅうな恵介くん」
「下の名前で呼ぶんじゃねぇよ、気持ちわりぃ」
顔には出さないが、呼ばれ慣れていないのか少し照れ臭そうにそっぽを向く倉本。
「ほな次、恵介くんのことよう知ってる春宮くん」
「はい! って僕ですか!? あっ、えっと、その
「緊張しすぎやで自分。それに小説家なんて凄いやん!」
「それほどでも」
槍壱に褒められて照れる春宮に拍手を送る蒼空たち一同。
「ほな次、じぃさん頼むわ!」
スムーズに進む自己紹介。指名された大和は、正座を解いて静かに立ち上がる。
「皆様、初めまして。
「――美島、やて?」
大和の長い自己紹介の中、槍壱は“美島”と言う名前だけに敏感に反応を示す。
「やっぱり! あの美島財閥の御曹司、美島蒼空さんですよね! 10歳から探偵業を始めたのち、数々の事件を解決し飛躍的に有名になった、あの――」
「はい、左様で御座います」
槍壱の疑問を掻き消すかのように蒼空のことを早口で話す春宮だったが、大和が話の腰を折るように答える。
「チッ……」
倉本も“美島”と言う名前に対して気に食わない様子を示す。しかし、他の者たちは美島と言う名前を聞いて盛り上がる。
財閥の御曹司で探偵と聞いて、蒼空のことだと知らない人はいないほど、彼は有名人なのだった。
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