第46話
ちょっと強気で自分の要望を押し込んだり、自由奔放な振る舞いをして権力者にふふ、おもしれー男されるというのは実によく聞く話であるが、おそらくそういった事をする連中は頭のねじが何本か外れている。
仮に、仮の話ではあるが私が本当に何かすごい生物が人間に擬態しているとしよう。それこそ翼の生えた空飛ぶトカゲであった日には何かやらかしてもさっさと山にでも飛んで帰ればいいのである。
が、現実問題として単なる人間であり、元の世界ほど個人の権利だとか管理だとかがはっきりしていないとはいえ権力に逆らって良いことは無いだろう。
あるいはこの全国規模、日本全国とかではなくマジで複数の国をまたいで存在しているらしい超巨大組織の権威を傘にぶいぶい言わせるとか、頭の悪い人間だったら決行してもよかっただろう。
そもそも貴族とは何か。例えば前世であればなんとなく偉い人達だとか、血液が青いエイリアンみたいな生物だなんて冗談を言える程度には廃れた考え方、存在であるのは確かだ。
発祥で言えばまぁある程度のコミュニティの権力者だとか、腕っぷし自慢が他のコミュニティとの争いで名を挙げ、とかある程度発達した文明で権力階級がノウハウの継承を含めた諸々を『血統』で括った辺りだろうか。
この世界でもまぁ似たような経緯で生まれているだろうという事で、物凄く簡単でわかりやすく言えばヤのつく自営業みたいなものである。
暴力団という点で見れば荒くれ者の多そうな冒険者ギルドもそうではあるが、支店の長が視界の隅で震えていたり言葉選んでいた事を考えればまぁ下と考えて良いだろう。
要は全国ネットでブイブイこそ言わせているが、地元のデカい所には頭下げてるイメージか。そんな組織の旗掲げてオラつくというのはちょっと頭が悪くないとできないと思うのである。
実際目の前で物凄く興味深そうにこちらを観察している王様であるが、まぁ私が今負けるかと言われればそんな事は無いだろうがアリスであれば負けも有るのでは無いかという凄みがある。
生憎とスカウターのような物も能力も持ち合わせておらず、やはり鑑定なんていう技能は恐ろしいほどに有用な能力だなぁと現実逃避気味に考えるがまぁ弱いということは無いだろう。
熟練度の方が重要、システムこそ絶対だとは思うがそれこそ固定貫通ダメージだとか必中効果だとかが存在しないとも限らない以上、そういうものが集まりかねない金持ち権力者は純粋に明確に『強い』とも言えるわけで。
王冠もそれこそ有用な能力の付与された頭装備という可能性もあるし、この前売ったばかりの鎧が目の前で着られているのも何かのアピールの可能性もあるし、腰に付いてる棍棒などはミスリルではなくアダマンタイトっぽさがあるし。
総じて『戦う人』である事が分かる以上、この国の貴族という連中がマジで戦国武将程度に考えておいた方がよさそうだなというのがトップをみればよく分かるというわけだ。
そういうのって東の小さな島国でやってて、王国とかの王様ってもうちょっとふくよか白髭のほほんなイメージがあるが、もう目の前に出されてしまっては仕方がない。
まぁ王様が戦闘力トップのパターンもあればこれより更に強い騎士団などがお出しされるパターンもあるだろうが、ともかく『強ければ貴族』的な可能性は濃厚。となれば。
「どうだ英雄殿、貴族、いやいっそ王族に興味などなかろうか? 礼節を弁えるだけの知性と教養、圧倒的な強さ。誰も反対などせぬと余が保証するのだが」
全然ありませんが??? 王様とか絶対に嫌でござるが??? と大声で言いたいには言いたいのだが。流石に『今日からお前王様な!』までは行かなかったが、七面倒くさい勧誘なのは確かである。
全然人間だが、そこはかとなく『私人の世の政治とかにはあまり興味ありませんよ』アピールで乗り切れるかを考え、そういえば有名な推定人外が他の国でブイブイ言わせていた事を思い出す。
ひょっとしてだが、『遊ぼうと思ってるけど他の同族のシマ荒らすのもアレだしちょうど何も居ない所に行って同じ感じであーそぼ』だと勘違いされてたるするんじゃという所まで考えて頭が痛くなる。
人生の目標とかそんなに無いけれども、少なくとも国のトップとか貧乏くじだと思っているから論外として。一旦国のお抱えになるメリットとデメリットを考えてみる。
メリット。国の庇護を受けれる、は他国にヤバそうな人外もいるし個人の能力で私より強そうな人が居ないみたいなのでノーカウント。金、はそれこそ1人で贅沢三昧できる程度には稼げるのでノーカウント。
権力などは別に欲しいタイプでは無いというか、一緒についてくる責任ってやつがあまり好きではないのでノーカウント。おやおやおや全然出てこないぞメリット。
一方デメリットといえば自由に色々できなくなりそうというか、少なくとも『じゃあ修行行ってくるね、10年くらい』とか言い出したらダメそうな時点で。
……いや、単に偉い人アレルギーと言われればそうなのだが。根が小市民なので立身出世とかあまり興味がないのである。と言うわけで結論としてはノーサンキューである。
……さて、帰ったら夜逃げの準備だな。
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