第41話
「きゅう~……」
ほんの1時間程度の後、疲労困憊と言わんばかりに倒れたアリスを小脇に抱え……ようとして大きさ的に持ちにくかったので肩に担ぐ。流石に引き摺るのはあれだからな。
最初こそ剣を振るうのを躊躇っていたが、こちらがマジで言っていることとマジで攻撃してくる事を悟った、というか数回掠らせた後は一生懸命になって攻撃してきてくれるようになった。
そんなわけで段々と精査を欠き最後にはヘロヘロとしか剣を振らなくなったアリスに、もっと全力でやらないとじわじわと攻撃を強めると最終的に倒れた、という訳だ。修行が足りない。
というのは冗談として、やはり意識の持ちようというのは大事らしい。そもそも私はこの世界をゲームっぽいと認識しているわけで、攻撃回数とて出来ると意識したから1撃に圧縮出来ている。
人間らしい意識を持っていれば体力の低下に伴い疲れ、こうやってパフォーマンスが低下していく。一方で私としてはゲームのキャラなんて移動は走り続けるし戦闘中は一切動きが変わらないのがデフォルトだ。
それこそ一日中どころかゲーム内では何度昼夜が入れ替わっても延々と狩りを続けてモンスターを倒し、レアアイテムがドロップするなりレベルが上がるまで戦わされ続けるのはあくまで『普通』の認識だ。
システムの加護、もしくは世界の仕様。まぁ名前などどうでもいいのだが、とにかく意識、イメージ次第で仕様が切り替わるのであれば、おそらく私も『ゲームっぽい』から『現実っぽい』に切り替わったらこうなるのだろう。
メリットが無さそうなので全然する気は無いが。しかし『意識の切り替え』などを強制出来るかと言えばそれも難しいだろう。
『この世界はゲームの世界なんです!』などと言ったとして、そもそも自分でも『ゲームっぽい』程度な上に『ゲームって何ですか?』から始まるわけで、理解してもらえたとしても『何言ってんだこいつ』案件なのは明白。
それこそ『あぁやっぱり遊び感覚の上位者じゃないか』辺りが落としどころになるだろうというのは簡単に想像できるわけで、そりゃ使えるリソースが違うのだから私の成長速度は周囲に比べれば『異常』というわけだ。
まぁ通常プレイやってる人間の皆様に同じ事を強要するのは厳しい、足並みそろえるのは難しいという知見は得られたので全然いいのだが。同じ事を後追いでやっても使える時間体力の差で私の方が強くいられるのはある意味朗報だろう。
何かしらの理由で私を親の仇のように憎んでる存在が産まれたとして。それこそ休む間もなく努力とかされたら怖いと思ってはいたが、ある意味一安心である。とりあえず怖いのは今強い存在だけだな!
というわけでアリスを宿にぶち込んでおき、さっさとダンジョンへ向かうのであった。
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