第39話

 この世界はゲームみたいである。その認識をもっているからそうなのか、単に元々イメージが重要であるのか。防具は装備した上でその気であれば剥き身の場所でも攻撃を防げるし、攻撃は手加減する気があれば薄皮1枚裂くような事も出来る。


 攻撃をすれば熟練度が貯まるし、攻撃を受けても熟練度が貯まる。少なくとも私の認識ではそうであるし、およそ事実であることは疑いようがない。


 しかし、しかしである。別に私はマッドサイエンティストのようなものでもなければ細かい数値まで把握する検証大好きな生き物でもなく、具体的に何をどの程度すればどうなるといった事は全く把握していない。


 もしそういった存在であればそれこそ全てのステータスが低い子供などに毎日ギリギリまでスライムに体当たりさせるだとか、何回攻撃しただとかを記録し、仮置きの数値ではなく細かいところまで調べていくのだろう。


 そうやって数値化していくことでより色々な要素が正確にわかるのは便利なのだとは思うが、私としては別に分かろうがわかるまいがする事が一緒なら良くないか? という気持ちでいっぱいであり。


 何が言いたいかというと、より効率よく、より安全に1から強くなる方法などというものは全く知らないので、私に弟子入り志願とかされても非常に困るという事である。


 なぜそのような話をしているかといえば、ある日の朝いつものようにダンジョンに向かおうと宿を出たタイミングで急に


「どうか弟子にしていただけないでしょうか!」


 などと声をかけてくる人間が居た、というわけである。


 これまでパーティーを組まないか、入らないかというような誘いこそ……いや、それもなかったので正直私と組もうという話をしてくる人間は初めてである。


 しかし先ほど考えた通り弟子などと言われても正直私にメリットも無いし、なんならよっぽどの事でもなければパーティーを組む必要すらメリットがないと思っている。


 ので断ろうとも思ったのだが、最初はすげなく対応していても2日、3日、果ては1週間も毎日律儀に頭を下げにくるともなればまぁ少しくらいなら……と思う程度には私にも人情というものがある。


 そもそも何故急に弟子入りなど言い出したのか、そう言ったことも踏まえて話を聞いてみることにしたのは別に相手が少々可愛い女の子だという事は大して関係なくは無い。


 いやまぁ、この世界は全体的に顔面偏差値が高い印象を受ける程度には美形が多いので、少々可愛い程度であれば平均値とも言えるのかもしれないのだが。


 まぁちょっと良いカッコしようと思える程度にはアニメ顔金髪碧眼美少女には効果がある、そういう事である。後から理屈をつければ色々あるだろうが、基本的にはそのようなものだよ、男なんて。

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