第37話

 人外魔境大戦などが起こりうる世界だという悲しい現実を確認してしまった私は正気度チェック。そんあフレーズのはびこる世界よりはマシに違いないと自分を慰める。少なくともシステムさんだけは私の味方をしてくれるのだ。


 結局なんだかんだで勘違いされつつも、なんだか高級そうなプレートを貰って帰ることにする。ついでに依頼なども見てみるが、程よく強い彷徨う魔物ワンダリングモンスターなどは補充されておらず、精々が難度8程度の魔物である。


 それだったらまだ難度8と言われているダンジョンに行く方が効率良いだろうと思いながら、人間には攻略不可能とか言われている魔境や難攻不落のダンジョンの情報を仕入れていく。


 田舎町では聞けないような情報、習ったことも無いけど自然と読める資料。流石王都というだけあって調べれば簡単に情報が集まる、というか今まで真面目に調べていなかっただけという説もある。


 近隣に開拓村こそあれ、近くの森に棲んでいる魔物が最低でもワイバーンクラスと言われている未開の地、上級冒険者が束になって入っても誰一人帰ってこなかったダンジョン。そういった場所が少なくとも王国内に存在するという話。


 後者は実のところ王都の近郊にあり、英雄志望と書いて自殺志願者と読む人間が数年に一回程度のペースで入っては命を散らしているらしく、かろうじて生還した人間の証言では悪魔がいたとかなんとか。


 悪魔といえば世界観にもよるがよっぽど強い種族、あるいは悪魔みたいに強いという表現なだけで全く別物かもしれない。ともかく完全に近い未知のダンジョン。


 というわけでその日早速入ってみたわけであるが、以前入ったことのあるダンジョンに比べ材質が上位、という感じが漂っていた。


 自然な洞窟という感じのしていたサイクロプスのダンジョンに比べ、手入れのされた石造り、というか大理石をブロックにして積みました感のある通路といえるような雰囲気。


 コツコツと足音を響かせながら歩いていると、ついに魔物に遭遇する。


 外見としてはなるほど、これはまぁ悪魔と言っても全然おかしくないなと思える山羊頭で蝙蝠みたいな翼を生やした、なんというんだったか……バフォメット? そんな感じの雰囲気の魔物である。


 鉄……かどうかわからないが真っ黒で金属製っぽい槍を構えながら、これまたニタリと嗤うようにして表情を作る。やはり高位の魔物とかは感情や知性があるのだろう。じゃあなんでダンジョンに籠ってるのかは知らないが。


 別に学者でもないし調べる気も起きないなぁ、などと考えながら剣を抜いている間に、急に向こうから火の玉が飛んでくる。人一人を優に飲み込むサイズのそれは、私を消し炭にせんと迫ってきて。


 あっさりと喰らった事に満足、または油断したのだろうにやけ面に木剣をぶち込めば中々の手ごたえ。ライオン君よりはダメージが通っていそうではあるが、逆に突き込んできたきた槍はライオン君より重い。


 とはいえ相手にとっては残念なことだが、攻撃が通らない時点でどうあがいても詰みなのである。最終的に地面の染みになった仮称バフォメット君を見て、悪魔も血とかあるんだなぁとそんなことを考えながら魔石を拾い奥へと進んでいくのであった。

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