第32話
援護のつもりで無駄な攻撃、というかおそらくは受け流しと同じで物理ダメージは8連撃以下を無効化していそうなネメア君へ攻撃する外野を離れさせた死闘は1昼夜を超えて遂に向こうの逃亡という形で決着を迎えた。
属性のある攻撃は有効打になりうるらしく、前回の襲撃は貴重な『魔法使い』や属性付きの弓矢でなんとか撃退したらしく。しかし幾人を残した魔法使いの撤収や矢切れの影響で私が戦っている間はそれもなく。
とはいえ低いダメージでも丸1日積み重ねれば同等にはなるという話で。私の持っているミスリルソードを見ておかしな顔になりながら色々と説明してくれたのは職員の男。
「じょ、冗談でもなんでもなく英雄レベル……でも頭のほうがおかしいのも書いてある通りだった……」
ぼそぼそと失礼極まりない事を言っている職員を放置しながら、責任感とか正義感のやたらありそうな町に残った魔法使いの男性に向き直る。いや、この世界魔法とかあったんだな。全然知ってたけど気にしていなかった。
「いや、吾輩らだけではどうすることもできなかったであろうから何も言いますまいが……して、何用で?」
魔法使いに用事なんて、魔法の話を聞く以外に何かあるのだろうか? いや、今まで周囲に1人も居なかったので聞きたいことも多いが、普通であれば物理攻撃の効かなそうな魔物相手にしてもらうのが用事なんだろうか。
「この国で魔法使いと言えば学院か塔の出身者しか居りませんし、学院の高慢ちきどもなぞは部外のものに魔法の話なぞせんでしょうからな。いや、塔の者とてみだりに広めると言うわけでもありませんがの」
わぁ、派閥争いが有りそうな雰囲気……いや、だからどうというわけでも無いし、その学院とやらの出身者も塔とやらに対して暴言吐いてそうというイメージはわかった。口にはしないが。
さて、知りたいのは魔法の使い方である。恥ずかしながらステータスの魔力という項目を見てから、何日かは寝る前に魔力とやらを感じれないか色々試行錯誤してみたり、それっぽい呪文やイメージの練習もしていたのである。
しかしまぁ結果として今のところ魔法を使えることもなく、流石に変な踊りやポーズまでは手を出していないし、魔法陣のようなものは書いていないが。まぁ手応えもないので半ば放置していた分野だ。
「ふむ、魔法が使いたい、ですか。うーむ、まぁその、丁度何とかなるというか、吾輩の手持ちにあるんですな、魔導書」
魔導書? いや、その方面はさっぱり情報を集めていないし、図書館のような便利な施設も無いし、本とか買っても持て余しそうな上に大体絵本クオリティっぽくて敬遠してたからな……
「うむ、魔導書というのはその者に才があれば魔法の知識を授ける、魔へと導く書物の事ですな。いや、本来であればその者の才を見極め、塔へ帰依した後に与える物ですが……これも何かの縁ですな。ささ」
差し出されたのはそこはかとなく分厚めの手帳サイズの本。本というかメモ帳みたいなサイズ感だなと思いながらページをめくってみると、急に光を放つ。
中に何が書いてあるのか見えないまま勝手にパラパラとページが捲れ、最後まで捲り切れると同時に灰とも砂ともつかないものに成り果てる魔導書。
と同時に、今まで存在しなかった知識が直接脳内に焼き付けられた感覚。よく分からないエネルギーをよく分からない手法で使いある程度固定された現象を生み出す魔法の使い方。
「ふぅむ、やはり才がおありでしたな。とはいえ今のものは下級電魔法ですからな。少々痺れるものの雷というには程遠く、誰も使いたがらないものですが……まぁ魔法を使うという事であれば問題ありませぬゆえ」
感覚としては何かを込めるとかうんうん唸るとかそういったこともなく、使うぞえいや程度で後は勝手に発動する、そんな程度でバチリと電気が迸る。
右手から左手に走った電気、といえば放電現象していそうだが実際は左手に直接電気を流された衝撃があっただけでその経路は見えず。ステータスを確認してみればMPが16減りLPは2減っていた。
コスパ悪すぎる事に唖然としながらも、一方ではこれも熟練度溜めれば成長するんだろうなという考えがあるので仕方ないかとも思う。
と、そこまで考えたところで目の前でポカンとする魔法使いに目がいく。
「ほとんど間も無く魔法を使える才能と自分自身に向けて躊躇なく放つ狂気……間違いなく塔向きですな……いや、多少の縁が出来れば程度に考えておりましたがこれは……」
私的には突然他人にぶっ放す方が狂人だと思うのだが????? いや、人に向けずに物や魔物に向けろって話か。違うんだ、低威力って話っぽかったしどのくらいのダメージか知っておきたかったから……
まぁぶっちゃけ属性としては新ミスリルの剣と被ってるっぽいので微妙だが、これで魔法使えると思うとテンション上がるな! 些事は気にせず喜んでおこう!
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