第25話

 人の口に戸は建てられないだったか、3日で千里を駆け抜けるんだったか。別段口止めなどもしていなかった事もあり、普通に人間関係がガタガタし始めたというか浮き始めた。


 最初こそ『可愛い後輩』ポジションを確立していたはずであったが少しづつ『なんか変なやつ』扱いになり、今現在では『実は関わらないほうがいい狂人』レベルまで落ちている。誠に遺憾である。


 地獄への道は善意で舗装されているとは誰が言ったのか知らないが、事の発端はおそらく受付嬢の善意だろう。


 大体は「心配だから気にかけてあげて」とかその辺りをそれとなく他の冒険者の皆様に言った感じで、想定していたのは『ジョン君ダンジョンで1匹だけの魔物とかを狙って逃げ回りながら頑張っている光景』だったのだろう。


 一方実際にやっているのは『ニコニコ笑顔でタコ殴りにされながら延々と剣を振るうジョン君(偽名)』な訳で。いや見られていようがいまいがやる事は変わらないでしょう?


 まぁ正直な話情報収集もあらかた終わり、別段パーティーを組むメリットも存在しないので人間関係の維持にかかるコストも踏まえると今の方がありがたいので、受付嬢は実にいい仕事をしてくれたと思ってはいるのだが。


 当人がどう思っているかと他人からどう思っているかが乖離していることなどよくある話であり、私は客観的に物事を見つめる事も出来る人間。すこぶる申し訳なさそうな受付嬢をみて『曇らせ』などという単語こそ過るがむしろこっちが申し訳ないと思う案件。


 いやまぁ他の冒険者の皆様もシステムの恩恵を受けているのだから誰だってできる事だと思うので、皆さんこれくらいできますよねとかを素で言っていたらガチのヤバい奴だが、私は言っていないのでセーフだとは思っていたのだ。


 が、現状こうなっているのでちょっと常識を見誤った感はある。あるが別段困ることもないので放置する。というかした。したので落ちるところまで落ちたともいう。


 年相応にはっちゃけるどころか少々はっちゃけすぎた感が否めないものの、しかし順調な成長と貯金の増加はその程度のことを些事だと語りかけてくるわけで。


 いや、別に対人関係が面倒だとか嫌いだとか、そういったほどではないのだが。実際これまでは順当にコミュニケーションを出来ていたわけだし。ちょっと優先度が低くなっただけで。


 正直な話携帯も無ければ家も無いので、それこそこの辺りでもうこれ以上育たないなと思えばさっさと別の街を目指そうと思っている程度には定住する気がない。であれば今深い人間関係を築いたところで、ねぇ?


 いや、一方的に手紙などを送り付けるような事をするのであればまた別だろうが、この世界で文通とか非常に大変そうだからな……という気持ちを拭い去れないわけで。


 まぁ困ることが無いので放置で良いな! 今日もダンジョンにイクゾー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る