第23話
当然のように炎のミスリルの剣を5発どころか10発叩き込んでも死なないヘビやコウモリ、クマなどに囲んで棒で叩かれながらの戦闘を繰り返すことしばらく。ダンジョンの外と同様にぽろぽろ落ちる魔石くらいしか無い戦利品を抱えながらなんとなくそろそろ夜かな程度の間隔で帰った日。
「で、どういう事なのかお姉さんに説明できるよねぇ?」
なぜか姉を名乗る不審者、などというフレーズが頭を過る。まぁ昨日のパーティーの女性3人もお姉さんを自称していたし、別に血縁関係を騙っているわけでも疑似家族を築いたわけでもないので普通に若い女性の一人称なだけだろう、というのは嘘だ。
完全に酔っていないニッコリ笑顔の受付嬢に圧をかけられながら、本日50万円にぎり届かないくらい位か、いやギリ届いたことにしてもいいかも程度の報酬をおあずけされる。ダンジョンの魔物の魔石の単価が約1000円程度、ギリ50に満たない数を納品したのだからまぁそうもなる。
説明も何も今まで通り魔石を納めて金を貰っているだけですが? あれ、オレなにかやっちゃいました? などとたわけた事を口にしないだけの理性はある。昨日のパーティーとしての収入に比べれば少ないとはいえ、これまでで最高額の稼ぎ。どうやってというのは当然のようにバレているわけで。
一人でダンジョンに行きましたぁなどと素直に話したところではいおしまい、また明日も頑張りましょうとはいかず、少なくともある程度は説得なり納得なりを与えなければ今後いろいろと不都合が出るんだろうなというのは予想がつく。いやまぁ最悪別の街とかに旅立てばいいだけなのだけれども。
ばちくそにキレている理由も理解出来ないのは難聴鈍感の呪いにでもかかっていなければ不可能であり、人間心配をかければ怒られもするのは至極当然のこと。まして今の私は側から見れば少年な上、それなりに人間関係を潤滑にする程度のコミュニケーションは行っているわけで。
ここで大切なのは、無傷だからいいじゃないっすかへへへだとか、あなたには関係ないですよねなどといった事実をもとにした正論を言わないことである。いや、コミュニケーションに正解などあるかと言われれば言葉に詰まるのだが、少なくとも不正解があるということだけは確実だ。
怒っている人間に油を注いだところで良いことは何一つない。というわけで素直に心配してくれてありがとうございます路線でいけば多少の時間のロスだけで丸め込める、というわけだ。そこはかとなく存在している親愛の情に上手い事訴えかければOKである。
「……もう、わかりましたー! でも、ちゃんとパーティーを組んでいかなきゃ本当に危ないんだからね?」
まぁ常識的に考えれば全くその通りであろうが、他人がいると効率悪いし毎日稼げないし成長も遅くなるし……
平然と続けてればそのうち気にならなくなるだろ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます