第20話

 難度、という概念は非常にガバガバというか、もっと区分けが必要なんじゃ無いかと思うのは仕方のない事だろう。


 というか一匹で大量の死者を出しながら100人単位でようやく倒せるような魔物や、そんな魔物を1人でも倒せるような大英雄が存在するという話を聞いてじゃあそれは難度いくつなんだとツッコミを入れなかったのはだいぶ我慢強いだろう。


 実際9より上は測定不能扱いだし、常人にはレベルも7や8になれば超上位だという話を聞きながらも、ひょっとしてそれは戦い方というか冒険者の生態が悪いのではと思うのは間違っているだろうか?


 最初の話に戻るが、例えばスライム君を思い出してみよう。


 今でこそ木剣1発で楽々地面の染みに変わる彼であるが、ビギナーもビギナーだったジョン(偽名)君にとっては2回攻撃が必要な魔物である。


 これが2人で叩けば確実に倒せるから難度1、というのは実際そうだろう。むしろ0とか言われないだけマシだとおもうレベルだ。


 一方でゴブリン君。鉄の剣3発をクリーンヒットさせれば地面の染みに変わる彼であるが、では難度1と2の間かと言われれば疑問が残る。


 偶に攻撃を躱したり、防御してくる彼らはレベル2以上無ければ最悪現状の私の逆バージョンで永遠に倒せない怪物であり、レベル2の人間が2人で先制攻撃したからと言って確定で攻撃されずに地面の染みになるかと言われると怪しいところがある。


 一方でこれがもっと上等な武器を使って1発でも当てられるので有れば即消し飛びますというので有れば、逆にレベル2でも確定で倒せる訳で。どの辺りの武器を基準にしているのか問題は非常に大きい。


 まぁ攻撃回数を考えれば2回攻撃だし難度2でいいんじゃ無いかなとは思っているし、実際評価は1寄りの2みたいな扱われ方なのでこれもまぁ2でいいか、というのがガバガバ判定だと思う所であり。


 1寄りの2とか言うくらいならもう更に10等分して11とか13とかその辺りにしろよとか思うが、まぁ攻撃回数をレベルとしている関係で1桁の数字の方が良いのだろう。


 そう考えるとじゃあ魔物の難度も向こうの攻撃回数で統一しろよとは思うが、人間側の都合で相手の耐久力を基準にした指標の方が都合が良いとかその辺りなわけで。


 ぐだぐだと考察を続けながら、そろそろ疲れてきたのか攻撃頻度の下がってきたゴブリン君を楽にしてやる。こっちは一日中剣振ってても大丈夫だというのに根性のないやつめ。


 まぁあえて木剣で手足の先だの耳だのといった部分をかするように攻撃し続け、向こうの攻撃は延々と流し続けるという事を10分も続けていれば仕方ないのかもしれない。元の世界だったら確実に息切れして死んでいるからね。


 貯金こそ増えるもののステータスも全然増加しにくくなり、レベルも上がらなくなった私が考えついたのがこれ、延々と戦いを引き延ばすというものであった。


 いや、最初は戦闘回数自体を増やせないか試行錯誤したのだが、まぁどれだけ頑張った所で上限はあるわけで。逆に移動時間ばかりが増えていくのである。


 そこでレベル方式ではなく熟練度方式だと考えている私は、発想を逆転させたのだ。戦闘時間を延々と長くすればいいさと考えたのである。


 最初は無駄かもしれないが検証程度の気持ちでやっていた、というか強くなるのは楽しいのに停滞し始めていたので迷走を始めているのではと悩んだ時もあった。具体的には10日目辺りで。


 貯金が減ることこそないものの稼ぎが減りどことなく心配……はせずやっと普通になってきたな程度で扱われたのは少々心外であったが、ともかく1月ほど経ったある日。


 ぬるりと繰り出された5発目の剣戟に、最初は一瞬呆け、その後どばどばと脳内に快楽物質が溢れているかのような興奮、幸福感、楽しさ、そういったものがやってくる。


 いやぁ! やっぱり自分が正しかったと思える時とか成長を実感できる瞬間は最高だな!!!

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