第19話

「まぁあのダンジョンは難度4の中位迷宮って所だな! レベル6の俺たちにかかれば4人でも楽勝ってもんだが、その辺の連中は5人や6人居ないときついってもんよ、ガハハ!」


 上機嫌に私の金で酒を飲みながら大声を出すのは、話の通り4人でダンジョンに潜っているパーティーのリーダーである。


 レベル、というのは私が攻撃回数と呼んでいるものの事であり、その定義でいうなら私は今レベル4という事になる。なんというか、本当は違うけどそう呼んでる感が否めない。


 いやまぁ、私の知識として『ゲームのレベルといえば上がればキャラクターの能力が成長する経験値で上がるもの』というイメージが強いだけで、別に問題はないのだろうけども。


 難度というのも大体は『同じレベルの人間が出てきた魔物の倍いれば潜れますよ』的な指標らしい。ものすごくガバガバ判定になりそうなので大まかな指標にしかならないやつである。


「宝箱もそこそこ湧くし、深くに潜りゃぁ難度5くらいの魔物も出てきたからなぁ! まぁ俺たちにゃぁ問題ないがな! ガハハ!」


 ダンジョンに潜る際はそれこそフルプレートメイルとかそんな呼び方をしそうなゴツい全身鎧にそれはもう攻撃力の高そうな斧を担いでいるだけあり、それはもう筋骨隆々のおっさんが豪快に笑う様は実際似合っている。


 酒を奢って適当にヨイショしているだけで機嫌よくベラベラと情報を落としてくれるのでこちらとしてもニッコニコであるし、側から見れば今まで働き詰めだった少年が先達の冒険譚を聞いて楽しんでる光景でもある。


 まぁ実際自慢の中に誇張もあるだろうと今いる冒険者連中には大体酒を飲ませて話を聞いていたところ、ある程度わかったことがある。


 まず、防具こそゴツいが基本的には事故防止程度であり、攻撃を喰らうのはミスだという風潮がある事。大体先制して相手を殺すのが大事であり、1人で無理なら2人でというのが難度の基準というわけである。


 まぁ武器のグレードにもよるだろ案件ではあるが、大体の冒険者が上等な鋼の剣だったりグレートアックスだったりととにかく武器は良いものを使って当たり前みたいな感じなので攻撃力は足りているのだろう。


 少なくともどんな攻撃も盾で防ぐだとか、延々と戦いを続けるなんて事はまずなく、戦いというよりは一方的な駆逐こそが大事だし自慢できる感じなのだろう。


 そう考えると今私がやっている事はどうなんだろう案件であるが、まぁ不意打ちを貰ったら即撤退、先制で勝てなければ即撤退みたいなプレイよりは安全にリソース消費なしで延々探索する派閥なので気にしないことにする。


 それからダンジョンの儲けであるが、宝箱から出てくる薬剤だの装飾品だのは基本的に非常に高額で取引されており、例えば飲むだけで1日力溢れるポーションは1本で100万とか、身につけるとほんのり賢くなれるサークレットが1000万だとか、そういった世界である。


 そりゃぁ毎日魔石をせこせこ納入した所でギルドの財政にはなんの影響もないよなぁとか、そのあたりまでならこれまでダンジョンがなかった街のギルドでも毎日即金で払えるの冷静に考えるとやばくないとか思いつつ。


 まだ暫くはダンジョンに行かなくてもいいかなぁと考えながら、自慢話にヨイショするのであった。

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