第18話
ダンジョンが無いという理由で閑古鳥が鳴いていたギルドは、ダンジョンができた場合どうなるでしょうか? 正解はすぐにどうなるというものでもない、であった。
過去形なのは2月もしないうちにぽつぽつと冒険者が増えていき、偶に減ったりしながらもなんだかんだで20人近いならずもの……もとい冒険者が居着いたからである。
元々パーティー単位で来た集団もいれば1人や2人程度で来てこの街で組み始める連中もいたりと、色々ありつつもなんだかんだで4〜6人位でグループを形成していた。
酒場もこれまでは多少は街の人が飲食に来ていた所を見かけていたが、それこそ常にのレベルで酒を飲んでいる人間が増えて繁盛しているのでは無いだろうか? 民度は確実に下がった気もするが。
受付嬢だってこれまでの日がな一日呑んでばかりの生活から一転、どことなく楽しそうに働いたり呑んだりしている。あれ、そんなに一転していない可能性がある……今度新しい人が増えたりスペースが増築されるみたいな話を聞いてやはりギルドってデカくて金がありそうな組織だと思った。
私? いや、1回もダンジョンには入っていないし何処にも所属していないが?
いや、ちょっと一回話を聞いた上で考えて欲しい。あれはダンジョンができて1週間程度の事だった。
業界には詳しくないが、やはり耳とか足とかが早い連中というのは居るもので、早速街へやってきた輩が到着したのである。名前は……なんだったかな、聞いてないし憶えてないが、おそらく受付嬢の名簿には横線付きで書かれているんじゃなかろうか。
初めて見る同業者であるが、鎖帷子みたいな鎧を始めとしたそれなりにきちっとした防具、格安の鉄の剣とは比べたらアレな感じの上等そうなロングソード。マッチョというほどではないがそれなりに鍛えてそうな中年おじさんといった出立ち。
明らかに私よりステータス高そうで装備も整っている先駆者であり、どことなく柄が悪そうなので出来ればお近づきにはなりたく無いなぁというやつであった。
「ダンジョンってなぁ危険だなんて言ってるが、出来立てに向かわず何が冒険者って話だよなぁ! 俺様にかかれば楽勝ってもんよ!」
みたいな事を言いながら、しかしものすごい自信満々だったのできっとそれなりにすごい人なんだろうなぁと思っていたら、翌日以降1度も見かけることはなかった。
安全第一、情報大事の精神を持つ私としては中がどうなってるかわからない危険と評判の魔窟に入るなどノーサンキューであり、せめて他のいけn……先駆者がある程度冒険してから行こうと思っていた矢先の出来事であり。
カナリア程度の役にしか立たなかった今頃地面の染みのおじさんの後を追いたいかと言われると……ねぇ?
新たにくる連中も貧弱装備の少年を誘っていくような愚行をすることもなく、多少絡まれたり話を聞いたり程度の距離感で過ごしているうちに早2月、というわけである。
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