第16話
尻尾を巻いて逃げるという言葉が相応しい遁走を繰り広げた翌日、私は森へと足を踏み入れていた。
いや、別にこれは昨日何があったかを忘れたとか酒の勢いだとかそういった過ちでは一切なく、十分な検証と勝算あってのことである事はきちんと主張させていただきたい。
具体的には昨日森からとんずらを決め込み草原でウサギやスライムを地面の染みや夕飯兼お小遣いにしていた時、ふと思いついた確認方法、すなわちスライム君を3〜4匹集めて攻撃させれば少なくとも受け流しが1匹毎か集団丸ごと、強いて言えば1ターン毎なのかが分かるよねという事だ。
結論から言えば5匹集めようが纏めて全て捌ききれたということで、つまり所詮2連撃しか出来ないゴブリン程度では何匹集まろうが私のLPを減らすことは無いという事である。
システムの詳細を知っているわけでも無ければ数値として見ることのできない熟練度の事なのでぶっちゃけそうであるとは限らないが、セオリーとして相手が強い方がより早く成長もできるだろうという気もするので、安全な範囲で強そうな相手と戦うのは当然のことである。
加えて言えば、金銭面で言っても単価でスライムの3倍以上の約1000円程度で引き取ってもらえる上に2〜3匹まとまってグギャグギャしているので、1回の戦闘が少々長引いた所で収入は爆増という訳だ。
であるならば森に行かないという選択肢があろうか? いや無いだろう(反語)。というわけで意気揚々と森まで来ているわけである。言い訳終わり。
ぶっちゃけ物価とか経済とかどうなんだろうと思うところもあるが、毎日ゴブリンを50匹も地面の染みにするだけで日給5万程度、年300日働けば年収1500万にもなるわけで。
実際順調に行けば毎日50匹どころか100匹も……いや、どうせまたリポップの枯渇があるだろうし、一度の遭遇数は増えど遭遇頻度は下がっているから皮算用になるが、少なくとも数日は日給10万を超えそうである。これで冒険者にならないのは嘘じゃないかレベルである。
いや、現状この街に私1人が冒険者という独占市場な事やダンジョンなる近所に存在しない主な仕事場の死亡率なんかを考えれば仕方ないのかもしれない。
週一労働で4人パーティだとすれば1人あたりの収入は単純計算で1/28になるわけで、更に休みは遊び呆けて散財を重ねるともなれば普通に労働する方が儲かるのは当然だろう。むしろそれでも遊び呆けれるダンジョンの収入ってヤバいな……
とりあえずは成長するのが楽しいので実質労働が娯楽ともいえる現状を続けるのである。遊んで欲しいならせめてゲームの1つでも持ってこいよな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます