第14話

 酒の一杯、それも一日中ぐだぐだ飲んでる人間が生きている程度のものでどうこうなることもなく、しかし日課に夕食時酔っ払いに絡まれる事が増えつつもしばらく。


 遂に身体が無意識のうちに3連撃を繰り出すようになり、ちょっとした冒険をしても大丈夫なんじゃないだろうかという側から聞けば油断慢心にも思えるような事を考え出す。


 というのも、街から小1時間ほど離れたあたりに森が広がっており、これまでの平原とは違うより儲けに繋がるタイプの魔物がいるという知識を手に入れてはいたのである。


 まぁゲーム的に考えればより強い魔物の方が儲かるのは当然であり、それこそスライム君の時点で単価300円程度と破格であるもののダンジョンでは1回で数百万稼ぐこともあるとなれば。


 とはいえ森などと言ってみれば確かに危険地帯に思えそうだが、実際は森というには隙間が多く閑散とした空間が広がる場所らしく、背の高い木々によって陽こそ遮られるが暗いというほどもない場所らしい。


 じゃあ行くか。行こう。そういうことになって突っ込んだ感想は確かにそんなに恐ろしい環境じゃないなというところであった。


 深いところまで入り込めばまた別であろうが、少なくとも浅い領域では出口、つまり街の方向を見失うような物でもなく。木々で遮られる視界もよほど遠くでも無ければ小移動すれば見えるんじゃないかと思える程度。


 そんな中を歩いているうちに遭遇した魔物はといえば、いつも見かけるツノウサギさんである。まぁ浅い領域だしなぁとのんびりと近づいていき。


「バァウ!」


 横合いから急に飛びかかってきたオオカミの攻撃を、身体が無意識に受け流す。


 は??? くっっっっっっそビビったんだが?????? お前絶対許さんぞ???


 即鉄の剣を抜き、そのまま全力で叩き付ける。実に自然な3連撃により無事地面の染みへと転生してもらうことに成功し、ふぅと一息吐いたところで。


「バァウ!」


 後ろから飛びかかってきたオオカミの攻撃を、身体が無意識に受け流す。無意識くん、というかシステムっぽいのには感謝しかない。


 反撃でそのまま地面の染みになってもらった後で、今度はきっちりと気を入れて周囲を探る。呑気にぴょんぴょんと飛び跳ねるツノウサギも地面の染みにした上で、今度こそ周囲に気配がないことを確認して一息つく。


 今まで、言ってみればノンアクティブな魔物だけだったがこれから先はアクティブな魔物が出てくる、そういうことだろう。いや、むしろ魔物なんていうんだからそれが当たり前なのであろう。


 当たり前すぎてわざわざ情報としてある物でもないし、警戒していなかった私が100悪いという話でもある。あるのだが……


 ふざけんなよマジでさぁ〜!!!!!

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