第10話

 スライムを倒し続けて最強になる系の創作や最初の街でスライムを狩り続けて最高レベルまで上げるゲームの実況プレイなんかはよく見かける話であるが、どうやらこの世界ではそんな事は無いだろうというのが1週間の結論であった。


 いや、流石に数百年単位でやっていれば違うかもしれないが、生憎と寿命が先に来てしまうだろう。少なくとも種族人間である我が身としてはどれだけ長生きでも100年程度が限界なのではないだろうか。


 というわけで、成長するには延々とスライムを倒していても意味が無いのか。そう問われればそうでもないと言えるのが微妙な所であった。


 最初の頃は一度振り終えればそれで終わりだった剣撃が、今朝方初めて振り返しての2連撃へと成長したのである。それも身体が自然と、本当にその気も無いのに2連撃するくらいには。


 手加減する気で1回攻撃を意識すればそうなるが、まるで何かにアシストされるかのごとき2連撃には明らかにシステム的な何かの恩恵を感じざるを得ないわけで。となれば結論はこうである。


『熟練度システム式だこれ!!!』


 まるでダイスを振る回数そのものが増えたかのような現象から考えれば、ステータスの伸びも含めて熟練度式と考えるのが正解だと思う。ゲーム的な部分が顔を出してくるのは本当に異世界な事を実感させてくる。


 と言うわけで確実な成長を感じる中、プラスな話題とは別のマイナスな話題も同時に存在するのは悲しい話である。


 何事かといえば、減少傾向で右肩下がりな収入状況。獲物であるスライム君のリポップよりこの街の駆除業者の方がペースが早いという問題である。この場合『ちくしょうゆるせねぇ!』と文句をつける相手は自分な訳だが。


 どのような生態系かは全く知らないが、自然と湧き出るスライム君とて有限のリソースであったらしい。1日駆けずり回って50匹ともなれば、明らかに遭遇率が低下しているのがわかるだろう。


 そりゃあ同業者だってダンジョンとやらに冒険しに行くわけだ。聞いた話によればモンスターもお宝も無限湧きらしく、放置すれば溢れてくる程なのだからそれはもう金になるだろう。命が対価だが。


 と言うわけで街のすぐそばだけを狩場にスライム専門駆除業者をしていた私も、これからは少々遠出しながら冒険者した方が良い、と言うかそうしないと食べていけないのだろう。だから近場にダンジョンがないこの街に未だ同業者が居ないんですね。

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