第7話

 このままでは生きていけない!


 というのも、数多くの……と言えれば良かったが、現在のリソースでギリギリいっぱいの数であるスライムの魔石5つであるが、ざっと日本円で考えれば合計1500円程度になった。


 2階で貸宿も営んでいるという酒場with冒険者ギルドの宿泊費が1日辺り1000円、但し食事とかは別。物価は今の所調べた範囲になるけども、まぁ食費だけでも1日1000円はかかるだろう計算である。


 全財産といえば聞こえが良い気もする小袋の中身は辛うじて2桁万円相当ではあったものの、ジリ貧とでも言うべき現状では貯金というには心許ないを超えて単純に人生のタイムリミットを示すだけであり。


 つまりその日の午後の内に、食事やら休憩やらで22まで回復したLPと、先程まであったはずの全財産があと3日もあれば尽きるレベルまで減った代わりに新しく得た鉄の剣を頼りに再度街から出たのは仕方のない事であった。


 投資と言えば聞こえが良いが、結局のところ博打に近い行為は脳の良くない部分を刺激しつつも心拍数などを向上させる。この後に成功体験が来れば立派なギャンブル中毒の入り口であり。


 しかし成功しなければお先真っ暗なわけであるから、本当に私はギャンブルに手を出してはいけないタイプの人種なのだろう。しかし状況が、状況がそれを許さないのだ……


 数分かけて見つけたスライムに、木剣より倍は重い鉄の剣を大上段に振り上げて思い切り振り下ろす。得物を変えた程度で、というのはよっぽどの熟練者の話であり、私は今日から冒険者のビギナー。


 良い仕事をするには良い道具、なんて言葉通りの事であり、そもそも杖っぽいものを武器にするのと最初から武器としてだけ作られたものを使うのであれば。


 たったの1発で地面の染みと豆粒へと転生したスライムくんだったものを眺めながら思った事といえば、『これでなんとか生きていけるな!』という事である。


 とりあえずその日は日が暮れるまで更に4時間程度、合計83匹のスライムを犠牲に雑に2万円を超える稼ぎを手に入れるのであった。

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