第4話
非常に残念な事ではあるが、自称したところでステータス欄の名前の空白は埋まらなかった。というわけで現状としては自称ジョン、あるいはジョンを名乗る住所不定無職……いや職業は冒険者か。かろうじて無職ではない。
といってもその職業の労働内容と言えばダンジョン化した地域の冒険や恒常的な素材の納入といったものらしく、今のところ優先して解決すべき仕事内容は無い、ということで今は街の外にいる。
仕事が無い。もしサラリーマンのように職場にさえ出ていれば給料の貰える状態であれば歓迎すべきことかもしれない。いや会社からすればとんでもない事ではあるが、一労働者としては理想的な状態だ。
翻って自営業に近しい冒険者という職業。仕事が無ければ当然ながら報酬なども無し。働かなくては給料など出る筈も無く、つまり荷袋の中でちゃらちゃらと鳴る全財産が尽きればそのままお陀仏というわけだ。
それを解決する手段と言えば一般的にはダンジョンの冒険、という事になるらしいのだが、受付嬢曰く
「ある程度発展した街にどうして今まで冒険者ギルドが無かったと思います? えぇ、必要が無かったからなんですよね! 何故か私は派遣されてきましたけど! なんででしょうねぇ! ……っぷはぁ!」
という事らしい。つまり手ごろな距離にダンジョンがあるわけでもなく、一番近いものでもその近隣の村などを拠点にする方が楽であり、わざわざ街に住んでダンジョンに行きたいのであれば他の街に行く、という訳だ。
街の外壁を見るにそれなりにしっかりとした防御力に見受けられる街だが、まぁそんなわけで効率のいい飯のタネは無い、となるわけだ。するとどうなるか? ひもじい思いをして飢えて死ぬことになる。
死にたくは無いのでせっせと街の外に出て、せっせと街道を外れて草原を歩いていく。街の見える距離という事で全然離れてはいないものの、5分程度も歩かないうちにソレに遭遇する。
少し大きめのボール程度の体躯。透明度低めではあるものの液体だという事が分かるドロドロとして居そうな材質。時折ぽよんと跳ねてはべちゃりと地面に落ちる不定形に近い不思議な存在。
駆け出し冒険者どころか大人なら装備さえ整えていれば余裕で倒せると太鼓判を押される謎生物、スライムとの初エンカウントであった……
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