第9話:神意を問う正義の王子
決闘が始まる直前に、決闘の責任者として闘技場に来られていた、第五王子のテレンス殿下が決闘の条件に異を唱えられました。
私達が殺されるところを見ようと集まっていた観戦達が騒然としています。
闘技場の中からは遠くて確実とではありませんが、プランプター伯爵家に味方してそちら側に集まっていた貴族達は、想定外の出来事に慌てているようです。
王家王国は最初からプランプター伯爵家を取り潰す心算だったのでしょうか?
もっと貴族家士族家を取り潰そうと、罠を仕掛けていたのでしょうか?
それとも、第五王子の正義感による独断専行なのでしょうか?
どちらにしても、また私達の方に潮目が変わりました。
決闘に勝って名誉を回復し、失われた財産を取り返すだけでなく、仇敵であるプランプター伯爵と嫡男を討ち取る事ができるかもしれません。
「いや、ですがテレンス殿下、代闘士は正当に認められた決闘の条件でございます」
「王家王国の屋台骨を支える役人が、神意を計る神明裁判に代闘士を立てるのが正当な行いだというのだな!
神に仕える神官が、訴えられた貴族が自ら神明裁判に出ないで、代闘士を立てるのが神の御遺志だというのだな!」
「テレンス殿下、神様は全てお見通しでございます。
代闘士を立てようと、正しい者に味方されます」
「よくぞ申した、だったらその言葉証明してもらおう。
余直々に代闘士に立って神意が正しく下されるか確かめてくれる。
余は天地神明に誓って正しく生きてきた。
もし余が負けて死ぬような事があれば、神明裁判に神が降臨されることがないと証明できる。
余が負けて死ぬようなら、神明裁判の名を借りて不正を働くものを討ってくれ、頼んだぞ」
テレンス殿下が側近の近衛騎士達に後事を託されています。
「御任せ下さい、テレンス殿下。
殿下に仕える側近が一人でも生きている限り、殿下の敵は討たせていただきます。
思い残される事なく、正々堂々と戦われてください」
私はあっけにとられてしまいました。
私だけでなく、父も決闘相手の代闘士呆然自失になっています。
当然と言えば当然です。
私や父はともかくとして、決闘相手の代闘士は、確実私達を殺せると高をくくっていたはずです。
それが、決闘相手が王子に代わってしまったのです。
王子を殺すどころか、傷つけただけでも死刑になる事でしょう。
ですが手を抜けば自分達が殺されてしまいます。
家族に類が及ばないように手出しせずに黙ってテレンス殿下に殺されるか、家族と地の果てまで逃げる覚悟でテレンス殿下を殺すしかないのですが、絶対に逃げきれないのは誰にも分かる事です。
「待ってください、それでは約束が違います!
こんな条件に変わるのなら、代闘士を止めさせてください!」
「そうです、約束と違い過ぎます、俺も代闘士を止めさせてもらいます!」
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