第8話:最後の賭け、名誉と家族をかけた決闘
父が屈強な戦士と相対していますが、私の相手も同じように屈強な戦士です。
フルアーマーブレートを装備しているので、実際の身長よりもさらに大きく見えてしまいす。
二人とも一九〇センチ前後の身長なのでしょう。
同じようにフルアーマープレートを装備していても、一八〇センチの父はもちろん、一六〇センチの私は圧し潰されそうです。
普通に戦ったら、一撃で殺されることでしょう。
全く勝負にならなかったでしょう。
ですがこの神明裁判は、国内外で広く知られてしまったスキャンダルに深く関連しています。
王家王国が大量の貴族士族を処分した事件なのです。
あまりに不公平な事をすれば、新たな処分が発生するかもしれないのです。
いえ、プランプター伯爵家の策謀に対して、フォーウッド男爵を相続したターニャが、何かあれば訴えるぞと動いてくれたのです。
大人しかったターニャが、あの一件以来人格が変わりました。
人を殺したことが大きかったのか、貴族家を背負ったことが大きかったのか、男爵家当主と商家の主に相応しい風格を漂わせています。
私も友人として負けていられません。
例え勝てないまでも、我が家の名誉を輝かせる戦いをしなければいけません。
「クリフォード子爵様、マチルダ様、この剣を使われて下さい。
父が決闘を申し込まれた時に備えて準備していた剣です。
敵の攻撃に自動的に反応して突きを繰り出す事ができます」
「そんな貴重な物をお借りする訳にはいきません」
決闘前に魔法の剣を貸すと言ってくれたターニャに、父は慌てて断ろうとしましたが、私も同意見でした。
これ以上ターニャに頼る訳にはいきません。
「いいえ、全ては亡き父が加担した謀略から始まった事です。
もしここで御二人が亡くなられたら、私は一生後悔します。
私の心を助けると思って、この剣と盾を受け取って下さい」
ターニャは魔法の剣に加えて盾まで貸してくれようとしました。
恐らくこの盾にも何か魔法が掛けられているのでしょう。
これほどの準備をしていたフォーウッド男爵と決闘していたら、父は確実に殺されていたでしょう。
父の死で、父とクリフォード子爵家の名誉を守る事はできても、母も私も弟も妹も、奴隷として売り払われていたでしょう。
プランプター伯爵家の介添人代闘士を前にして、ターニャが貸してくれた剣を強く握ります。
この剣に命を預けるしかありません。
どうせターニャが助けてくれなければあの時に死んでいたのです。
今回もターニャを信じるだけです。
「ちょっと待て、なんだこれは、いったいどういう事だ?
あまりに理不尽な条件ではないか!
余は当主と次期当主が正々堂々と戦うと聞いたから証人を引き受けたのだ。
このような卑怯な神明裁判の証人にされるなど納得できんぞ!
余を愚弄するにも程がある!
この条件を認めた役人と神官をこの場に連れてこい!」
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