第10話:正義の剣・クリフォード子爵家の勝利

「決闘、始め!」


 闘技場まで降りて来られたテレンス殿下の合図で、決闘が開始されました。

 よくぞここまで私達に有利に話が動いたと、夢現かと疑ってしまいます。

 決闘の場に、 プランプター伯爵と嫡男が引きずり下ろされたのです。


 神々は本当におられるのかもしれません。

 いえ、神々に感謝するのは当然ですが、誰よりもターニャとテレンス殿下に心から感謝しなければなりません。


 私の前にはフルアーマー装備したプランプター伯爵家の嫡男オリバーが立ちはだかっていますが、先程の代闘士に比べれば案山子同然です。


 ですがそれでも、何の訓練もしてこなかった私では、普通に戦ったら確実に負けてしまいます。


 しかし父は勝ってくれると思います。

 領民の先に立って開墾や労働に勤しんできた父は、人並み外れた体力があります。

 剣術も、領民を護るために常に鍛錬を怠ることがなかったのです。


 私が簡単に殺されないで、惨めで見苦しくても、逃げて、逃げ続けてオリバーを引き付ければ、父は必ずプランプター伯爵家当主ノアを討ち取ってくれるはずです!


「死ね!」


 オリバーが長剣を振り上げて襲い掛かって来ました。

 ターニャを信じなかった訳ではありませんが、魔法剣に頼りきる気はありませんでした。


 自分の出来る事をやる、それだけを考えていました。

 ですが、軟弱者と高をくくっていたオリバーは、信じられないほど早く剣を振り下ろしてきたのです!


 私の足さばきでは、オリバーの剣を避ける事など不可能、一瞬でそう悟りました。

 剣を合わせることも、盾で防ぐことも、間に合わないと理解していました。

 

 それでも、腕を上げて致命傷を避け、少しでも生き延びて、オリバーが父に向かわないようにしようとしました。


 ですが、私の腕は勝手に動いてくれました。

 盾を持った左腕が信じられない速度で動き、オリバーの剣を軽く逸らします。


 それだけでなく、剣を持った右腕も勝手に動き、まるで剣が伸びたように、オリバーの鎧を刺し貫いたのです!


「ウギャッオウ!」


 手に伝わる感触で、心臓を貫き即死させた事が分かりました。

 何とも嫌な感触です、一生忘れられないであろう感触です。

 死ぬまで悪夢に悩まされるのは確実です。


 ゴクッ!


 父が、プランプター伯爵の首を刎ね飛ばしました。

 プランプター伯爵は、息子のオリバーが殺されるなんて、小指の先ほども考えもしていなかったのだと思います。


 オリバーが私を殺すまで、時間稼ぎをして、二対一で確実に父を殺す心算だったのでしょう。


 それが、決闘開始早々に真横で息子を殺され、隙だらけになってしまったのです。

 その隙を父は見逃さず、一刀でプランプター伯爵を討ち取ったのです。


「この決闘はクリフォード子爵家の勝利。

 神明裁判はクリフォード子爵家が正しいと決まった!」

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