第25話 戦闘終了


 フローネスはポケットから銀の筒のような物を手に持つ、そしてボタンのようなものを押すと同時にじゃらじゃらと鎖が垂れて来た。


「さっさと終わらせるか――ねッ」


 鎖を鞭の様にして振り払う――まるで刃の様、それだけで影の魔物を一掃した。


「『鎖蛇くさりへび』」


 鎖ごと相手に投げ飛ばすと鎖がまるで意思を持ったかのように動き出し宙を浮くそして蛇の如く振舞いながら魔物を一匹一匹と減らしていく。


「こうも雑魚ばかりだとソフィアの活躍を奪うかもなぁ、ソフィアも早く動いたほうが良いぞ」

「言われなくても」


 ソフィアはフローネスの背後から来る敵を手で切り裂いていく。


「......ッ」


 手に時折来る激しい熱、それは徐々に範囲を広げていきながら熱を帯びた痛みが強くなっていく。


「『赤蝕せきしょく』」


 しかしソフィアはそれを無視し更なる攻撃を続けて魔物を倒し続ける。


「――ふぅ」


 そして魔物は全て倒したことでソフィアは自身の手を通常の状態に戻した。


「ッ......」


 両手を上げて目視すると白かった手は変わり赤く火傷の状態になっていた。


 怪物の手のデメリット、そして『赤蝕』の使用はより躊躇にそのデメリットが出てきてしまう、魔力が一か所に集まり、さらに熱を持ち続ける為に身体自体がその魔力の熱に耐えられなくなっていく。


「......」


 しかしある程度のものならば自然治癒する、これは特殊な火傷なのだ。


「回復しておくか?」

「.......大丈夫です、そんな事よりここを片付けたのですから一度皆さんと合流しましょう」

「じゃあアタシはサルザーの方を回収してくるか、お前はあっちでガルスとアルセムを回収してこい」


 フローネスは何か言うのも待たずに行ってしまう、フローネスが指した方向に向かってソフィアは移動する。



 ■



「......しまったな」


 フローネスと別れた後、俺はすぐに寝てしまったらしい。


「アルセムは――」


 逃げられたらやばい、と思ったがアルセムは幸いそこにいた。

 目を瞑っていてもしかして死んだのかと焦ったが息はしていた、きっと俺と同じように体力が切れたのだろう。


「良かった......」


 他の皆は無事だろうか、いや無事か皆あんな奴らにやられるような魔導士じゃない。


 遠くから声が聞こえた――


「ガルス君ッ」


 この声は......思わず声の方角へと顔を向けるとソフィアが走っていた。

 

「まぁ大丈夫だろうと思ってたが――」


 ソフィアが走って寄ってくる、それに合わせて俺は座った。


「良かった、深い怪我はしていないようですね......アルセムもいますね」

「そいつはもう戦うどころかまともに動けない」


そんな話をしてふとソフィアの手に目がいった。


「ソフィア、その手」


 俺が指摘するとソフィアは片手で片手を軽くつかむ、その後は反対の手も同じようにする、その火傷の様な跡あとは見た事があった。


「『赤蝕』か」

「えぇ、お恥ずかしながら」


 彼女の持つ怪物の手、あれはソフィアの身体に負荷がかかる、特に『赤蝕』は自分自身にも悪影響を受けてしまうから乱用は避けるべき魔法なのだが。


「ちゃんと考えながら戦っていますから大丈夫ですよ」

「本当かぁ?」

「本当です」


 どうだかなソフィアは負けず嫌いだし、普通に無理して戦うに違いない。


「もしかして......心配してくれているのですか?」

「......」

「ふふふ」


 ソフィアがニヤニヤしてる、クソ心配して損した、なんだか恥ずかしい。


「おーい、大丈夫か、ガルスッソフィアッ」


 遠くからサルザーの声が聞こえる、近くにはフローネスもいた。


「あれ、歩いてる......」

「結構元気そうですね」


 案外大丈夫だったのか?

 そのまま近づいて来た。


「あー歩けるようになったのはついさっきだ、早く戦いに参加する為に魔力による自然治癒を早めてたんだがな、間に合わなかった」


 こうして俺とソフィアとサルザー、フローネスが揃った。


 このままジャウラ町に戻る事は決まったものの、アルセムを誰が背負うかという話になり、色々と話し合った結果、同性でいま一番体力がある元気な奴ということで結果サルザーが背負う事が決まった。


「俺も負傷者なのに......」


 サルザーは愚痴を零しながらも渋々とアルセムを背負う。


「助かるなサルザー、アタシはめんどくさくてね」


 俺は既に体力ギリギリ、ソフィアは手の負傷や長時間戦っていたという体力的理由、それとめんどくさいという私情からサルザーが持ったほうが良いと提案した。


「はぁ、ったく......」


 そしてソフィアはまだ座っている俺を見る。


「ガルス君は立てますか?」

「大丈夫、少し手を――」


 そうだった、ソフィアの今の手の状態だと俺を引っ張るなんて――とか考えているとそんな俺の考えを見透かしたかのように無理矢理に手を掴んで立たせた。


「はい――ふらついたりはしてません?」

「大丈夫そうだ、ありがとう」


 こうしてジャウラ町まで移動し、フローネスが外部へ今回の事件を知らせた事で『虹の瞳』による襲撃事件が魔導協会にも把握され人員が派遣されることとなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る