第12話 頼れる人がいるだけで全然違う
ソフィアとまさかの再会を果たした俺たちは一度戻り依頼について話してもらった後に遺跡まで向かう事になった。
マトラ遺跡――もともとは周辺の古い都市と祭祀場跡が残る場所として今まで細々と発掘作業が行われていた。
それが変わったのは祭祀場跡から地下へと続く広い空間が見つかったこと、発掘品や調査からこれは豪族か皇族の墓だとされている。
そしていよいよ本格的な発掘調査をするために向かっているところというわけだ。
前にレイとサルザー、後ろにザラン、そしてその間に俺とソフィアという位置で歩いていた、レイは時折出る魔物を片っ端から倒しみんな正直出る幕無しという感じ。
「いや楽しちゃって良いのかなぁ良いよなぁ?はっはっはっ......」
ザルザーは楽が出来て嬉しそうだ。
......そういえば、どうしてソフィアが先に行っていたのか聞いてなかったな。
「私たちが先に遺跡に行ったのは様子を見るためでした、墳墓が露出してから魔物が多く集まるようになっていたらしいので、少し数減らしをサルザー君と」
「その魔物が増えたのも儀礼品が原因?」
ソフィアに色々と聞いてみる。
「どうでしょう......報告では最奥に棺らしきものがあったと聞いていますから盗掘対策としてそれに魔法がかけられていた可能性もありますし、わからないとしか言えませんね」
その最奥の棺が一応の最終目標だ、そこまで広くはないと聞いているが魔物が多いと聞く、今回は遺跡調査の護衛だけでなくそういう魔物対策もあるという訳だ。
「ふふふ、何かあったら守ってくださいね?」
「S級魔導士だしお前の方が強いでしょ......」
「......そういうのは嘘でもカッコつける所では?」
とか色々としているとマトラ遺跡までたどり着いた。
■
マトラ遺跡まで到着すると同行する研究者と作業員が出迎えてくれた。
「初めましてぇ、魔導協会の研究員リリケル=メールンと申します」
黒い髪に二つのおさげをして丸眼鏡をしている少女がペコペコしながら近づいて来た。
「いやぁまずはここにいた魔物の掃討ありがとうございましたぁ、我々は基本無力なものでしてぇ」
その他にも魔導協会、またエオール帝国からの研究者もいた。
「祭祀場の地下はダンジョンと名乗れるほどの規模ではありません、それは前回の調査でもわかっておりますぅ」
マトラ遺跡を進んでいくと祭祀場跡と言われる場所までたどり着いた。
半身半獣の像が二対に並び中央にはかつての名残か整備されていた道のような物が今なお残っていた、それを進んでいくと下り道になっていた。
「ここから古代魔導帝国......バンターグ帝国の祭祀場とされるものがありますぅ」
下っていくと紋様が刻まれた石を地面にした大広場があった、白く紋様は赤と青などカラフルに彩られ何か竜や動物?が描かれている。
そしてそんな彩られた地面の端には割れている箇所があった。
「ここですねぇ皆さまは凄腕の魔導師様でしょうから我々の護衛をお願いしますぅ」
こうして俺たちはマトラ遺跡の最奥に向けて進むのだった。
■
魔導士5人、研究者5人計10人による遺跡調査、目的は最奥の棺らしきものとその周囲に置いてあった道具。
「あれらは放置していて悪人の手に渡ってしまいますからねぇ、迅速に手に入れたいのですぅ」
マトラ遺跡内は地下だというのに異様に明るく視界の問題はなかったのは助かった。
しかし安心したところでサルザーはニヤリと笑いながら言った。
「――早速魔物だ」
それは地面から噴き出るように現れ獣の形をとる。
「ガルス君、油断しないでくださいね......この魔物はただの魔物では......」
「あぁわかってるよ」
主を守る影――墓荒らしを阻む防衛魔法の一種、これは魔物というより召喚獣に近い。
「そういう大事なことは報告しておいてほしかったけどな!」
俺の練習した遠距離魔法もここじゃあ危なくて使えない。
「よし――」
周りには頼りになる人もいる、不思議と恐れはあまりなかった、これなら戦える。
■
研究員を守りながらの戦闘、サルザーは指を指して魔物を見る。
「――『サンダーボルト』」
指先から放たれる雷は魔物を関電させていき塵にしていく。
「嬢ちゃんの方は大丈夫か――って」
サルザーはレイを見る、行きの時から率先して魔物を倒してきた彼女の体力を心配しての事だが――これは魔導士としてどうなのかを分析する彼の癖でもある。
分析して実際どうこうするわけでもない、それで何か起きてもやっぱりな、で済ます、その程度の分析だ。
「――『三連切り』」
まるで風の様に舞そして相手の懐に突き進み勇猛果敢に腹を割いていく恐れ知らずの魔導士、ただの田舎者から成り上がった真正の剣士。
「ったく、心配無用ってね......んじゃ次はっと――」
そしてもう一人いるザランという魔導士を見る――
「ゴルバル家で唯一のA級魔導士か」
魔導士の世界で家の衰退は珍しくない、ゴルバル家もかつては栄華を誇ったが今では見る影もなく、当主ズリージャが亡くなった時、魔導士の名家としてのゴルバル家は滅びるだろう。
「とはいえ実力はある」
剣士というにはいささか乱暴すぎるがそれ故の力の強さは目を見張るものがある、磨けばそれはより強くなるだろう、判断力もある、問題ない。
ただ――レイ=グリンドという天才がどう作用するのか未知数である。
「まぁ考えても仕方ない」
分析を止める、これ以上の分析は疲れるだけだ。
「そして、例の魔導士」
ガルス=アリオスト、彼の事は大体は把握している。
アリオスト家の生まれでソフィアと親しくしていて最近A級魔導士になった男、正直に言えば彼の周りには良からぬ話もある、本来実力の見合わぬA級魔導士、アリオスト家の失敗作、ベルバスター家の狗......散々だ、本人は知っているかどうか。
だがその力はA級でも十分に通用するだろう、それに――
「まだまだ発展途上って感じだし人間味を感じる」
ソフィアお気に入りの魔導士、なんだよ問題ないじゃないか。
「――って」
ガルスは自らの腕や足を強化して戦う武闘家スタイルで汎用性が高いな、とか考えていたが、それを満足気に見ているソフィアが目に入ってしまう。
「――なんで研究員と同じ場所で立ってんだァッ!?ソフィアッ戦え!」
おのれソフィアめ、とサルザーは吠えるが彼女は研究員の安全も兼ねて近くにいるのだ......サボっている訳ではないはずだ......とサルザーは思い分析も止めてそのまま戦闘に戻るのだった――
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