第26話 引き篭もりとボッチ、ダンジョンをクリアしてしまう
俺はひょいひょいとカマセの攻撃を避けながら口を尖らせる。
「おいおい怒んなって〜〜全部お前が悪いんだぞ〜〜?」
「黙れ!!」
「ちょっと〜〜! 今からダンス踊るんだからリズムに合わせてよねっ!」
てってーてってれってれってってーてってーてってれってれってってー(周回)。
カマセが俺に接近しては真っ黒の剣を振るってくるので、俺は適当にダンスを踊る要領で避ける。
因みにちゃんと音源は流しているぞ。
某有名Vtuber事務所◯ロ◯イブの人達がカバーしていた中毒性のある歌だ。
確か◯ロ◯イブVtuberの沢山の人で歌っていた気がする。
《ガチギレされてんじゃんww》
《何か人間っぽいよな。見た目はエグいけど》
《真っ黒の人間がいてたまるかよ》
《それはそうww》
《怖すぎるもんな》
《ライヤーさんがダンス踊ってて草》
《しかもめちゃくちゃオタクの歌なんだよなぁ……元はVtuberの歌ではないけど》
《あの歌いいよな。頭から離れん》
《もはや幻聴が聞こえてくるほどだよなw》
《って言うか呑気に配信してて大丈夫なんか?》
「ああ全然大丈夫だぞ? 流石にコイツ程度に負けないって。と言うか姫乃でも勝てんじゃね?」
「わ、私ですか!? ま、まぁ大分速さに慣れてきたので多分行けるとは思いますけど……」
「じゃあ俺がバフ掛かるからやってみな」
俺は取り敢えず身体能力を向上させるバフを重ね掛けする。
「どう?」
「物凄くいいです! これなら私でも行けるかもしれませんっ! はぁあああああああ!」
姫乃が、相当なバフが掛かっているはずなのに完璧に身体を制御して剣を振り下ろし、それをカマセが受け止めた瞬間———カマセと俺諸共辺り一面を吹き飛ばした。
それもダンジョン内で1番破壊不可能と言われているボス部屋が原型を辛うじて残している……かな(?)くらいに。
《お?ww》
《あら?ww》
《やっちゃいましたねw》
《うん、やっちゃったね》
《何か凄い件》
《普通にめちゃくちゃ攻撃力高い件ww》
《強すぎww》
《流石姫たん! やらかすレベルが違うな》
《よっ! 流石ドジっ子の最強!!ww》
《ワイはこの子を初期から見て来たんだ》
《もうワイらの希望の星だよ》
《それにライヤーさんのバフが凄いww》
「———いや凄いちゃうねん! 俺まで吹っ飛ばされたんですけど!? 口に砂がめちゃくちゃ入ったんですけど!? ぺっぺっ! 此処の砂、クソ不味い……」
「ご、ごめんなさいっ! やっぱりまだ少し慣れてなくて……」
姫乃が剣を抱いてオロオロしながら俺の下へ駆け寄って来る。
その姿が1番可愛いことを俺とリスナーは知っており、俺は癒され、コメント欄が爆発的に動き始めた。
全部『かぁいいなぁ』で染まっている。
「凄いな姫乃! この攻撃力ならどんなボスでも楽勝だよ!」
「うっ……お褒めの言葉が痛いです……」
「———私を無視するな!! おい! 『あ、まだ居たんだ』的な顔をするな!!」
「「まだ居たんだ(ですね)」」
「貴様らコロス!!」
怒り狂ったカマセが俺達に向けて突進してくるが、俺は兎も角、姫乃もバフのお陰で余裕で避ける。
《流石に可哀想になって来たな……》
《もう倒してあげちゃった方が優しさなのではないのか説》
《あり得るww》
《そろそろ脳の血管破裂して死にそう》
《2人とも! そろそろ遊んでないで倒してあげて!》
《ラスボスちゃんのライフはゼロよ!》
「…………よし、倒すか」
「え、倒せるんですか?」
「え、何なら後10秒以内に倒せるけど? まぁ取れ高? が少なかったから長引かせてただけだぞ」
「なら早く倒して下さいよ!!」
「あ、ハイ、スイマセン」
結構ガチ目に姫乃に怒られたので……仕方ない。
真面目にやってやりますか。
俺は全身から湧き上がる魔力を全て雷に変え、その全てを右手の人差し指に集まる。
「え、あ、私———」
「じゃあな、カマセ。———《雷爆指弾》」
シュ————————パァァァァン!!
俺の指から発射された雷が、カマセの動く間も与えず、刹那の間に身体に到達して爆散する。
その威力は先程の姫乃の攻撃の数倍以上あり、破壊と同時にボス部屋の崩壊が始まった。
「———やばいですよライヤーさんっ! このままでは私達、生き埋めになっちゃいます!」
「まぁまぁそんなに焦るなって。じゃあ俺達が最初に出会った時と同じ方法で逃げるか」
俺は姫乃をお姫様抱っこすると———今頃高笑いしているであろう結奈先輩の下へ向かった。
ダンジョンの外では、2人を最下層に落とした張本人である結奈がホッと安堵の溜息を吐いていた。
「ふぅ……何とか邪魔になりそうな人達は倒せたわね……ほんと、2人とも頭がおかしいわ。途中完全に流れを取られていたもの。本当に死んでくれて良かったわ……」
結奈は配信では絶対に浮かばない様な狂気の笑みを浮かべる。
「アイツらが生きていたら私の立場が危うい……どころか奪われていたわね。何週間も前から計画していたよかっ———」
「———どうも、結奈先輩♪」
「!?」
俺が姫乃をお姫様抱っこしながら笑顔でそう言うと———驚いたように目を見開いた後で、俺達の近くにある配信用のドローンを見て、ガタガタと身体を震わせ始めた。
「そ、それって……もしかして……」
「そうです結奈先輩。ずっと配信を回していました。貴女が私達を嵌めたことも全て」
《最低だな結奈ちゃん》
《流石にドン引きだわ……チャンネル解除しよ》
《普通に人間の屑》
《俺もチャンネル解除しよ》
《俺も》
《俺も》
《俺も》
《俺も》
《私も》
「ま、待って! これは———」
「おおー! 見てみな結奈先輩! チャンネル登録既に3000万人下回ってるよ?」
「あ、ああ……そんな……アアアアアアアアアアアア———ッッ!!」
結奈は狂った様に叫ぶ。
そんな結奈に近付くと、俺はそっと呟いた。
「俺さ———裏切る奴だけは赦せないんだ。だから———牢屋で精々悔やむんだな」
俺の言葉を聞き、あまりのショックで気絶した結奈をみながら警察に電話した。
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次回最終回です。
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