第17話 引き篭もり、華麗に撃退する
「話通じない奴と対峙するのが1番面倒なんだよなぁ……俺の世界でも処女厨的な奴偶に居たけどそれを相手に押し付けちゃダメだろ……」
俺は目の前でダダ漏れの殺気を隠そうともしない頭のおかしいユニコーンを見ながらため息をつく。
しかし相手には聞こえていないのか、鼻息荒く血走った目で俺を見つめていた。
「ごめんなさいライヤーさん……私が一緒に配信者をしようと言ったばかりに……」
そう言って唇を噛み、目を伏せて落ち込む姫乃。
何なら俺への申し訳無さで涙まで流している。
おいおい美少女は涙も似合うけど、それは嬉し涙だけなんだぞ。
はぁ……しゃーねぇーか……どうか怒らないでください!!
流石に抱き寄せるのはどうかと思った俺は、落ち込む姫乃の頭に恐る恐るといった風に手を乗せると———
「———あんま気にすんなって。そもそも別に姫乃のせいじゃないんだしな。最終的に決めたのは俺だし」
「ですけど……」
「ああもう頑固だなっ!! これだから陰キャって呼ばれるんだぞ! うぐっ……自分で言ってダメージが……と、兎に角! 何でもかんでも謝んなくていいの!」
俺がそこまで言っても未だ申し訳無さそうに目を伏せている姫乃に、心の中で何度も土下座しながら頬を両手でムニュッと掴み、無理やり笑みを作らせる。
「ら、らひひゃーひゃん!?」
「ほら暗い顔しない。姫乃は笑った方が数千倍可愛いんだぞ? 俺がこの1週間程の観察で気付いたことだぜ? 後、美少女の笑顔は世界を救う。ほら笑って笑って」
俺がドヤ顔で言うと、姫乃は少し驚いたように目を見開いて顔を真っ赤にした後、その真っ赤なまま濡れた瞳を細めて小さな笑みを漏らした。
その姿を見た俺は満足したのでうむうむと頷くと、姫乃に頼み事をする。
「姫乃、少し頼み事があるんだけど」
「な、なんですか……?」
「この状況の動画を取ってる人探してきてくれない? ケイサツってのに捕まったらまずいんでしょ?」
「あ、そうですね……分かりましたっ。私が必ず見つけ出してみせますっ」
「おう、頼んだ」
俺のお願いを受けて気合の入った姫乃は、早速動画を取っている人を探すために少し足早に人混みの中に紛れ込んでいった。
その姿を見送った後、先程まですっかり忘れていたユニコーンの方を向く。
「ごめん待たせ———」
「———俺の前でイチャイチャするなあああああああああ!! そして地味に俺に攻撃されないように姫乃様を盾にするなあああああああああああ!!」
ごめんマジでそんなつもりはなかったわ。
だから中々攻撃してこなかったんだな。
俺が心の中で先程まで静かだったことに納得していると、大剣を肩に担いでいるにも関わらず、物凄いスピードで此方に突進しては大剣を振り下ろしてきたユニコーン。
意外と速かったことに少しビックリするが、この程度の速度なら十分対応できるものだった。
即座に民間人の周りに魔力障壁を張った後、自身の体の周りにも魔力障壁を張って大剣を防ぐ。
その瞬間に爆風が起きて民間人から悲鳴が上がるが、俺の障壁によって爆風も届かないので安心してほしい。
「本気で斬り掛かって来るなよ———なっ!!」
「ウグッ……この程度の攻撃なんぞ……屁でもないわッッ!!」
数十メートルの空中で体勢を立て直したユニコーンが、今度は落下の力も加わった大剣を振り下ろしてくる。
ぱっと見で先程よりも倍以上の破壊力があると予測した俺は魔術を構築。
今回は周りに被害を出さないために風を使っていく。
「《上昇気流》」
「な、何だこれは……!?」
「驚いてる暇はないと思うけど?」
「!?」
俺は上空に再び投げ飛ばされるユニコーンを、空中に足場となる魔術陣を発動しながら足に身体強化魔術を施して追い付くと———
「《風爆》」
風同士を衝突させて爆発を起こす。
その爆風は俺が身体強化魔術を付与してパンチするよりも強く、ユニコーンは地面に向かって物凄い速度で落下していった。
下にはクレーターが出来ないように何重にもした障壁を張っており、ユニコーンはそこに激突してワンバウンドした後に地面に落ちる。
「くっ……馬鹿な……! 魔術師程度に大剣使いの俺がここまでやられるなど……あってはならないッッ!!」
「おいおい差別大好きかよコイツ……と言うかスキルまで使うとかガチやん」
ユニコーンが何かしらのスキルを使ったのか、全身を真っ赤に染めて体が少し巨大化したではないか。
でも理性がないのか目は完全にイッてるし、涎を垂らして『う”う”う”う”……』と獣のように低く唸っている。
そして俺をギラギラした目で睨むと、
「ギザマ”ダゲバユ”ル”ザナ”イ”!!」
人間の言葉ではないような野蛮な声を出しながら、あろうことか大剣を投げてから突進してくるではないか。
その速度は先程の比ではなく、下手したら障壁が破られる可能性もある。
此処で俺が避ければ民間人に死人が出てしまう。
———とならば、俺が成らなくてはなるまい。
「———それはコッチの
———雷に。
———バチッ……ズドンッッ!!
雷の轟音が辺りに響き渡り、その直後———
「ゴホッ……」
俺の拳を食らったユニコーンは、反応する間もなく俺に鳩尾を突かれ、白目を剥いて気絶した。
俺の通った場所の地面には未だ帯電が見られるが、じきに収まるであろう。
「———ライアーさーんっ!! 動画を撮っていただいている方を見つけましたよっ!! これでライヤーさんの自己防衛が証明されます!!」
俺はそれを聞いた後、一先ず地面に座り込んだ。
「やっぱり家が一番だなぁ……」
再度家というありがたみを感じた貴重な体験だった。
まぁもう2度目は御免だが。
因みにあの後事情聴取が行われたが———結局俺はお咎めなしで即座に開放されたのだった。
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もう1話の更新は20時くらいになりそうです。
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