第13話 ボッチと引き篭もり、突発的なダンジョンブレイクを解決する

 珍しい真面目枠。

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「———《風爆》」


 風が発生した後、相手を吹き飛ばす程の爆風が辺りに発生し、至る所のゴブリン種が吹き飛ぶ。

 その魔術にはゴブリン種のみに効く様に発動させているので姫乃や民間人への被害は起きない。


 今回の俺の役割は防衛。

 俺の雷魔術は確かにこう言った集団戦は特に強いが、扱いが難しく民間人達にも被害が出るので使用は出来ない。

 なのでなるべく周りへの被害がなく、尚且つ使いやすい魔術を選択すると《風》になったわけだ。


 そして姫乃はと言うと———


「———はぁああああああ!!」


 縦横無尽に動き回ってゴブリンを駆逐していた。

 ショッピングモールと言うこともあり、吹き抜けのため、色んな角度から攻撃を繰り出してはゴブリン達を撹乱している。

 まぁ一振りで何体も倒しているので撹乱が必要かは定かではないが。


 そんな時———隅の方でゴブリンジェネラルに囲まれる家族が目に入る。

 父親と思しき男性は妻と娘を守るために近くの物干し竿を使って立ち向かっていた。

 女性陣も男性も皆顔が整っていることから、ゴブリンの標的にされた可能性が高い。


 俺は「マズいっ!」と反射的に身体強化魔術を用い、一瞬にして家族の下へと移動すると———


「———すいません借ります」

「え!?」


 男性の持っていた物干し竿を拝借して脚を地面に突き刺すと、回転しながら速度を乗せてゴブリンジェネラルを一気に吹き飛ばす。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい……貴方は……?」


 やばい……何も考えてねぇわ。


 俺は男性にそう問われ、咄嗟に出た名前をそのまま口に出す。


狐男きつねおとこです」

「き、狐男……?」

「はい、狐男です」


 我ながら壊滅的なネーミングセンスだが、まぁ咄嗟に出たにしてはマシな方だろう。

 俺はこれ以上詮索されないためにも障壁を張った方を指差す。


「あの店に行ってくだされば、俺が魔術で障壁を張っているのでモンスターは入れません」

「あ、ありがとうございますっ!!」


 男性はお礼を言うと、家族を連れて逃げようとする。

 しかしそれを見逃すゴブリンではなく、退路を塞ぐ様に現れるが、俺がそんなことを許すはずがない。


「お前らはこっちな」


 俺は物干し竿に風を纏わせ、まるでボールの様に吹き飛ばす。

 吹き飛んだ先には姫乃が居り、少し驚いていたものの即座に斬り伏せていた。


「さぁ今のうちにどうぞ」

「———お兄さん強いですね……」


 俺がゴブリンをこの世界にある野球の如く吹き飛ばしていると、助けた家族の14歳くらいの娘さんが突然俺に話しかけてきた。

 驚いて娘さんを見ると、そこには顔を赤く染め、トロンと若干情欲を孕んだ瞳を此方に向けている。

 そして俺の顔を凝視しながら更に顔を赤く染めた。


「お、お顔もかっこいいですね……」

「……へ?」


 俺はその瞬間、狐の仮面が外れている事に気付き、即座に辺りを見渡して落ちている狐の仮面を拾うと顔を隠す。

 どうやら移動中に風圧で取れてしまったらしい。

 これからは魔力で固定しておこう。


「……お嬢ちゃん、名前は?」

夢原唯香ゆめはらゆいかです!」

「じゃあ唯香ちゃん、この事は2人の秘密だからね」

「2人の秘密……わかりました! この事は絶対に言いません……!」

「よし、ならあの障壁の中に入って」

「はいっ」


 そう言って娘さん達———夢原家は障壁の中へと入って行った。

 この家族が最後だったので、もう民間人は障壁の中以外にいないはずだ。

 魔力感知で確認しているので間違いない。

 

「姫乃は……全く問題なさそうだな」


 俺が姫乃に目線を向けると、最後のゴブリンにトドメを刺しているところだった。

 彼女がトドメを刺したのを最後に一応ゴブリンは現れない。


「姫乃、どうだ?」

「大体は片付きましたが……ダンジョンは未だ活性状態です。ダンジョンをクリアしなければいけないでしょう」

「じゃあクリアするか」

「そう、ですね……一応民間人の安全は確保できましたし、警察も呼んでいますので」


 俺達がダンジョンを攻略すると決めた直後———再び『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!』と地響きが鳴り、突如新手のモンスター反応が現れた。


「……急ぐか」

「そうですね……しかしもしかするとダンジョンボスも出てきている可能性もありますね。ダンジョンなら配信が出来たのですが……」

「バレないか?」

「ゴブリン系のダンジョンは日本の至る所にありますから多分大丈夫だと思いますよ? 発生してもう既に2時間は経ってますし」


 そう、民間人に被害が出ない様に戦っていたのと、屋内と言う事で予想外に時間が掛かっていた。

 この世界にも兵士みたいな者は居るらしいが、何故未だに到着しないのだろうか。


「警察が来ない理由も知りたいですが……一先ずダンジョンに向かいましょうか」

「了解だ」


 俺達は再び現れたゴブリン種を片っ端から駆逐しながらダンジョンに向かった。








「ヒメナーの皆さん、こんヒメですっ!」

「どうもライヤーです」


 行く間に全てのゴブリンを潰してダンジョンの中に入ると、予告なしに配信を始める。



《こんヒメ》

《こんヒメ》

《こんヒメ》

《こんヒメ》

《こんヒメ》

《ゲリラ配信助かる》 

《昼も姫たんとライヤーさんが見れるのマジ嬉しい》 

《それな》



 最近は俺達のチャンネル登録が700万人を超えたおかげか、ゲリラでも余裕で2、30万人の同接が取れる様になった。

 昔はゲリラだと数万人がやっとだったらしいので、相当な進歩だろう。 


「———それではこれからゴブリン系のダンジョンをクリアしたいと思いますっ!」

「今回は少し真面目にやってくぞ〜〜」



《普通は常に真面目にやるもんなんだよw》

《真面目にやるのが当たり前なんだよなぁ》

《姫たんとライヤーさんが異常なだけで普通なんだよこれはw》

《普段がなぁ……》

《面白いから良いけど、真面目なのも見てみたい自分がいる》

《それな》

《俺も確かに見てみたい》

《頑張って姫たん!》

《ライヤーさんも頑張れ!》



「早速ゴブリン退治としましょう。今度はライヤーさんが倒して下さいね。援護はしますので」

「りょーかい」


 俺は続々と現れるゴブリンを目で捉えると———



「———ダンジョン内は俺の庭だぜ?」



 ゴロゴロゴロゴロ……ピシャァァアアアアアア!!


 雷魔術———《雷轟》を前方に放った。


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 今日も18時に投稿予定!

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