第14話 ボッチと引き篭もり、クリアするも特定される
「ふぅ……取り敢えず第1陣は何とかなったな……」
「何とかなってませんけど！？ 私現在進行系でここから動いたら感電してしまいますけど！？」
そう言う姫乃の言う通り、俺の放った《雷轟》が消えた後のダンジョン内は雷が辺りに帯電していた。
確かに俺は自分の魔術なので特に効果はないが、姫乃には普通にビリッと来るかもしれない。
《すげぇなぁ……》
《もう言葉も出ねぇや……》
《これエレキフィールドだぞエレキフィールド！！》
《はっ！？》
《た、確かし……》
《まさか某ポケット化け物のエレキフィールドだと……！？》
《か、かっけぇええええええ！！》
《俺も使ってみてぇよおおおおおおおおおお！！》
《でも恐ろしくチーム戦には向いてないな》
「だって俺、引き籠もりだったから周りなんて全く気にしなくてよかったし」
「うっ……」
俺が自分で言いながら惨めになってダメージを受けていると、姫乃も何故か胸を抑えて苦しんでいた。
《うんうん姫たんも気持ち分かるよね》
《姫たん昔同じこと言ってたもんね》
《私、ボッチなので周りを気にしなくていいんですよね……ってね》
《縦横無尽に駆け回るの1人でしか出来ないもんね》
《やったら間違いなく死ぬもんね》
《死なないライヤーさんが異常なのよね》
《苦しくなったんだね……姫たん》
《ドンマイ姫たん》
《克服するんだ姫たん！！》
「これ以上言わないで下さいっ！！ 恥ずかしくて死んでしまいそうですっ！！」
「かわゆいのぅ……やっぱり恥ずかしがってる美少女は世界の宝だよな」
『可愛いは世界を救う！』とかよく漫画やラノベで書いてあるが、本当にあながち間違いじゃないように思えてくる。
可愛いこそ至高なのであるよ。
「まぁなら魔力障壁張るから抵抗しないでくれよ」
「はいっ……わぁぁぁぁ……魔力障壁ってこんな感じなんですね……！」
「え？ こんなの初歩中の初歩だから雑魚魔術師とでも組んで———あっ……」
「やめてくださいよぉ……同情しないでください……ぼっちなのは分かってるんですから……」
「な、何かごめんな…………ん？ あれ？ そういえば俺もパーティー組んだの姫乃が初めて……グハッ———！？」
《自爆してんじゃんw》
《予想通りで逆におもろいわw》
《仕事してたのに1人ってw》
《何か可哀想になってきたよ……》
《2人が出会ったのってもはや運命だろ》
《それな》
《どっちもボッチだもんな》
「やかましい！ 兎に角先進むぞ！」
「あ、拗ねました。私にはあんなに言うくせに」
「姫乃もしーっ！ 幾ら美少女だからって許さないからな！？」
「さ、さっきから美少女美少女と……」
姫乃が照れているのか少し目を逸らす。
若干顔も赤くなっている気がするが、周りが暗いのでよく分からない。
くそッ……明るければ美少女の照れ顔が見れたというのに……！
一瞬だけ光魔術を本気で使おうかと思ったが、流石にモンスターを呼び寄せるだけなのでやめておく。
「はぁ……もう先行こうよ……」
「自分がタネを巻いたのになぜ1番疲れているんですか……あ、あ、置いてかないでくださいっ！」
俺はこれ以上聞かないために耳を塞ぎながら先へと進んだ。
———第25階層。
あれから1時間半が経ち、俺達は爆速でボス部屋の前まで辿り着いていた。
しかしそのボス部屋を守る様にモンスターがウロウロしている。
「ど、どうするのですか……？」
「ん？ アレらはこうするんだ、よッ！」
俺は地面に手で触れて魔力を奴らのいる所まで流すと、新たな魔術を唱える。
「《炎柱》」
瞬間———モンスターの足元から一気に魔術によって発動された炎が柱の如く天へと伸び、モンスターを叫び声も上げさせる事なく焼却。
《すげぇえええええ！！》
《マジで強すぎねぇか！？》
《本当に引き篭もり？》
《引き篭もりはこんなに強くならんのよ》
《それな》
《同じ引き篭もりだとは思えんな……》
《そう言えば火って初めて見るよな》
確かにこの世界にやって来て、火魔術を使った事なかったな。
今までは風と雷で事足りたし、そもそも火は扱いづらいのであまり使わない。
「それじゃあ入るか」
「はいっ！」
俺達はボスのいるボス部屋の扉を開ける。
瞬間———2人同時に固まり、一旦扉を閉めた。
「…………ふぅ……帰るか」
「物凄く理由は分かりますけど帰らせませんよ！」
《何だよあのゴブリンの量……》
《ボス部屋いっぱいにモンスターは無いわ……》
《しかもチラッと見えたが、弓とか魔法を準備している奴らもいた気が》
《間違ってないぞ》
《俺もみた。普通に怖かった》
《2人が一旦扉を閉める理由が分かるわぁ……》
《ほんとそれな》
《手を取る様にに分かるわぁ……》
「……どうするか……」
「今回は手伝いましょうか……？」
流石にあの量は可哀想だと思ったのが、姫乃が心配そうにそう訊いてくるが、丁重にお断りする。
「いや……今回は余計1人の方が速くて楽そうだ」
「ふぇ……？」
姫乃が、何言ってんだコイツは的な視線を向けてくるが、気にしない気にしない。
俺は頭の中でシミュレーションする。
先程開けた際に確認したモンスターの数は約100体。
その内5体がゴブリンジェネラルで、2体がゴブリンキングとゴブリンクイーン。
ゴブリンクイーンは味方へとバフを授ける能力があるため、速攻で倒さないといけないモンスターの一体である。
ならば———アレを使ってみるか。
「よし、扉開けるか。本当は面倒だけど……仕方なく、仕方なくだからな！？」
後は此処のダンジョンをクリアしなければ、俺達が助けた人たちも死んでしまうかもしれないからな。
《ツンデレ乙》
《ツンデレ乙》
《ツンデレ乙》
《ツンデレ乙》
《ツンデレ乙》
《ツンデレ乙》
《男のツンデレはモテないぞー》
《そもそも引き篭もりもモテないぞー》
《ライヤーさんは別っすよ！ ライヤーさんならモテモテになれるっす！》
《お、ライヤーガチ勢がやって来たぞ》
……何か知ってそうな人が居るんだけど。
俺はその特徴的な話し方から、ついさっき会った金髪のチャラ男が頭に思い浮かぶ。
同時に姫乃も同じ人を思い浮かべたのか苦笑いをしていた。
しかし何で俺がツンデレなんて言ってんだろうか。
まぁそれは後でリスナー共に問い詰めるとして———
「さて———戦闘開始だ」
俺が扉を開けた瞬間———弓兵部隊が弓を飛ばしてくるが、魔力障壁によって守られている俺達には効かない。
俺は再び弓を番える前に大規模な魔術を構築する。
「———雷神トールの力を我が手に———」
俺の手に膨大な雷が凝縮して集まる。
それを俺は解き放つ様に天へと投げ———
「———落ちろ———《
———手を振り下ろす。
ズドドドドドドドドドドドドドド！！
「「「「「「「ギャァァァアアアアアア！？！？」」」」」」」」
途端に超極大の雷が落ち、ゴブリン達を悉く滅ぼしていく。
俺はその間にも更に新たな魔術を構築。
それはこの世界の漫画に出ていたスナイパーライフルを元にした魔術だ。
「《狙撃》」
手を銃の形にした後、指先に膨大な魔力を集中させて解き放つ。
光線が途轍もない速度で射出されると、寸分違わずゴブリンクイーンの眉間を撃ち抜き即死させる。
俺はゴブリンクイーンが死んだのを確認すると同時に、自身の脚に身体強化魔術を施して駆け出す。
人間離れした脚力によってゴブリンキングとの距離は一気に縮まり、動揺しているゴブリンキングの懐に入ると———
「《雷剣》」
雷の剣を生み出して心臓を穿つ。
「グァアアアアアアアアアアッッ！？」
ゴブリンキングは痛みと混乱で咆哮を上げるも、既にジェネラルを含めた全てのゴブリンは《雷神の一撃》で死んでいるため増援など来ない。
「———はい、終わり」
俺は雷剣でゴブリンキングの身体を焼却すると、クリアの証であるダンジョンコアが現れた。
《えっ……？》
《……はい？》
《ん？》
《？？》
《何が起こった？》
《いや一瞬で終わったな》
《凄すぎて言葉が出ないんだが……》
《これはバズること間違いなしだな》
《姫たんも扉の前で驚き過ぎて口が半開きになってるもん》
《ライヤーさんってこんなに強かったの……？》
「どうよリスナー共！ 伊達に15年間仕事していたわけじゃないんだぞ！？ 1人だったのも俺が強過ぎただけだからな！？」
俺は驚愕に恐ろしいほど書き込まれるチャットへと言い訳を言い放った。
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