第12話 ボッチと引き篭もり、ダンジョン災害に巻き込まれる
今まで入ったこともないあまりにもお洒落で人の多い場所に、俺達は危うく回れ右をして帰りそうになる。
「……これはお嬢の言う通り、入るのは相当勇気がいるな……」
「でしょう? ———って何でさっきからお嬢なのですか?」
姫乃が俺の背後に隠れながら不思議そうに訊いてくる。
「そんなの勿論姫乃がお金持ちのご令嬢だから……」
後は姫乃のお父様に『姫乃のことを下の名前で呼ぶな』って言われたからだけど。
いや、姫乃のお父様———
それでそんなイケおじに怒りに顔を染めて言われたら頷くしかなかったんだよ。
しかし、姫乃はそれが不服らしく、むぅ、と頬を膨らませて俺の背中をつねってきた。
「痛っ、痛いって……何でつねるの?」
「むぅ……姫乃って呼ばないとやめません。お嬢と呼ばれるのは嫌いなのです」
「でもお父様———あっ……」
「お父様……? 私のお父さんに何か言われたのですか?」
「い、いやぁ……何でもないよ……?」
俺はそう言って誤魔化そうとするが、姫乃は此方をジト目でジーッと見てくるが、お父様からは『俺が言ったこととは絶対に姫乃には知られるなよ?』と言われていたこともあり、口を噤む。
「ほ、本当に言わないとダメ……?」
「はいっ! これは今後私達の関係を左右する話です!」
「ぐっ……じ、実は……」
俺は姫乃の圧に負けて全てを話す事に。
「———と言うわけですはい」
「そうですか……お父さんがそう言っていたのですね?」
「は、はい……」
「教えてくれてありがとうございます。後でお父さんとお話ししときますね?」
そう言ってふふふ……と黒い笑みを浮かべる姫乃。
目にハイライトが入ってないですよ姫乃さん。
それと……ごめんなさいお父様。
後で娘さんの尋問始まるかもです。
俺が心の中でお父様にあやまっていると、気を取り直したらしい姫乃が言う。
「それじゃあそろそろ買いに行きましょう!」
俺の背後に隠れながら。
「ひ、姫乃さん? どうして俺の背中に? 先程の勢いは一体
「え、えっと……あ、あれとこれとでは違うのですっ!」
そう言って俺の後ろに隠れたまま宣う姫乃。
一体何が違うのだろうか。と思わないこともないが、聞かないでおくことにする。
俺は気遣いのできる男なのだ。
「それで、何処がオススメなんだ?」
俺は後ろに隠れた姫乃に訊く。
正直俺はまだここに来て数日なので、この世界ではどういった物がお洒落なのかイマイチ分からないのだ。
あちらの世界ではそもそもお洒落なんて概念は貴族共にしかなく、平民はお洒落なんて考える暇はなかった。
しかし姫乃はずっとこの世界に居る。
なので多少は知っているかも、と期待を込めて訊いてみたのだが……。
「??」
姫乃はキョトンとして首を傾げる。
まるで私に何故聞くのですか、とでも言いたげに。
…………あれぇ?
「姫乃……もしかして1回も買い物したことない?」
「は、はい、実はそうなんです! お父さんに行くなと言われていましたので……どうして分かったのですか!?」
「お父様ッッ!!」
お父様よ……アナタは一体なんてことをしてくれたんだ……ッ!
俺がお父様の過保護っぷりに天を仰いでいると、姫乃が何かを思いついたとでも言うように顔を明るくした。
そして『バーンッ!』と効果音が付きそうな雰囲気の中宣う。
「———そうですっ! 案内所に行って訊けばいいのですっ!!」
「因みに訊くけど姫乃は訊けるのか?」
「無理ですっ!!」
「じゃあなんで言ったのよ!? ———ってやめろ俺を見るな! 俺も知らない人に質問なんて絶対に無理だぞ!? 姫乃と話しているのだって奇跡なんだからな!?」
「お願いです! 私が家に住ませているのですからこれくらいいいじゃないですか!!」
「やめろよ急に断りにくくするの!! 大体最初に———」
「———あのぉ……お客様? もう少し静かにしてくださると……」
「「あ、えっと……ごめんなさい……」」
俺達が言い争いをしていると、何処かの店員さんが俺たちを注意しに来たことにより、此方に視線が集中していることに気付き、2人して何度も頭を下げながらその場を離れる。
「……き、緊張しました……やっぱり直で見られるのは緊張しますね……」
「それな……普通に精神的に悪いわ……」
お互いに疲労困憊になってベンチに座っていたその時———
———ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
突如建物が揺れ、何処からともなく地響きが聞こえだした。
何事かと俺達2人が立ち上がった瞬間———
「「「「「「「———ガアアアアアアアッッ!!」」」」」」
非常階段と書かれた所からゴブリンが雪崩れ込んできた。
俺達はお互いに顔を見合わせた後、近くに売られていたお面を手に取り、レジにお金を置く。
今回は配信ではないため、身バレを防ぐためだ。
「これ買いますねっ!!」
「あ、え、あ、はいっ!!」
姫乃は困惑している店員をそう言うと店を飛び出し、俺達は狐のお面を被る。
「姫乃はモンスターを倒してくれ。俺は民間人の保護に回る」
「了解ですっ! 今回はサボるのは禁止ですよ」
「流石に死人が出そうな場面でサボりなんてしないって」
俺達はそんな軽口を言いながらも、姫乃はいつの間にか手にしていた剣でゴブリンを両断し、俺は民間人を守る様に魔力障壁を貼る。
更には風魔術でゴブリン達を吹き飛ばして民間人となるべく距離を置かせる。
———このときの俺達は知らない。
「ま、まさかこんな所に姫たんとライヤーさんが居るなんて……」
お面を買った店の店員に、お面を被る姿からの一部始終をカメラでバッチリ録画されているなどとは———。
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