第5話 引き篭もり魔術師、案の定オタクになる

 どうも引き篭もり魔術師のライヤーです。

 現在は日本で最も大きいとされる娯楽施設に来ています。


「———これは何だ!?」

「トランプですね」

「これは!?」

「ジェンガですね」

「これは!?」

「漫画ですね」

「これは!?」

「アニメですね」

「これは!?」

「ライトノベルですね———って何で娯楽ばっかりなんですか!?」


 姫乃が俺の腕一杯に抱えた娯楽の数々を指差してツッコんできた。 

 しかし俺はそんなツッコミに即答する。


「だって今まで娯楽をした事ないんだもん」

「何故か物凄く可哀想に思えてしまうのでやっぱり聞かなかった方が良かったです!

……ところでですが、それら全部買うのですか? お金持っていないので買えませんよ?」

「あっ……」


 そう言えば俺、この世界のお金1円も持っていないわ。

 彼方の世界のお金は何百年豪遊しても無くならないほどあるが。


 しかし、これを手放したくはない……ということで、引き篭もりお得意技のおねだりを実行することにした。

 俺は目をキラキラと輝かせてパチパチさせる。


「……何してるんですか?」

「おねだり」

「顔が少しいいだけに様になっててイラつくので、買ってあげますからやめてください」

「あ、はい」


 この子、結構ズカズカと言ってくるな。

 まぁ年下にたかる俺の方が最低だけど。


 ———ということで買って貰った。


「いやぁ……まさか本当に買ってもらえるとは……見た目だけじゃなくて中身も天使なんだなぁ……」


 彼女は俺のいた世界では間違いなく絶滅危惧種だよな。









 そして使い方を教えてもらったのだが———物凄く感動した。


「うわぁ……すげぇなぁ……よく考えられてんだなぁ……」

「トランプみて凄いっていう人初めて見たかもしれません」


 そう言う姫乃はあからさまに俺へと好奇の視線を向けていたが、初めて知ったのだからこの反応はしょうがないのではないだろうか。


 だって何度も言うけど俺の世界には娯楽なんてこの世界のサッカー? モドキしかなかったんだもん。

 それもただ蹴るだけのクソつまらんやつ。 

 ……俺の世界終わってんな。


「日本サイコーー!!」

「大声上げないでください! 此処公園だから視線が集まるんですっ!」


 俺はそう言われて周りに注目を向けると、確かに遊んでいた子供やその親であろう大人が皆が皆俺達を見ていた。

 それも姫乃と同じ好奇の視線だ。


「……よし、帰るか」

「いきなり冷静にならないでくださいよ……で、ライヤーさんは何処に帰るんですか?」

「え? 何処って勿論ダン———」

「一般人はダンジョン立ち入り禁止ですよ」


 じゃあ大丈夫だな…………ん?


「俺って一般人なの?」

「まぁ、そうですね。探索者の証を持ってませんから」


 そう言って姫乃が財布の中から、カードの様な物を取り出す。

 カードには、姫乃の名前と顔写真に等級、所属などが書いてあった。

 

 所属は無所属ね……過去に何処かに入っていたわけでもないと。


「……俺が姫乃のマブダチになってやるからな」

「余計なお世話ですよっ。それに一体何処で……ってどうせ立ち読みしてた漫画ですか」

「正解。何か金髪のチャラい(?)男が主人公に言ってた」


 別に陽キャと呼ばれる人種に憧れたわけではない。

 そう言うノリに憧れただけだ———なんてボケてる場合じゃないな。


「やべぇ……帰る場所ねぇし金もねぇやんけ」

 

 因みに引き篭もりに野宿は拷問です。


 俺は直面した自身最大級の危機に頭を抱える。

 しかし此処で俺の天才的なおつむが画期的なアイデアを思いついた。


「———探索者とやらになればいいじゃんか!」

「協会の登録受付はもう終わってますよ。2時間前に。それにライヤーさんは住民登録も戸籍すらもないので登録は絶対に出来ませんよ」

「…………(絶望)」


 姫乃が呆れた様にため息を吐きながら言ってきた。

 その瞳の奥に若干の挑発の色が見えるのは俺だけなのだろうか。


 それにしても、上げて下げるの上手いですね姫乃さん。

 もしかして俺がモンスター多い所に連れて行ったの恨んでる?


 俺が地面に膝と手をついていると、姫乃が俺の目の前にしゃがみ込んだ。

 現在姫乃の服は短パンなので例の物は見れなかったが、すべすべで程よくださいムチっとしたとてもえっちな太ももが目の前に現れる。

 何だ、と思って見上げると、そこには先程とは違い、慈悲深い天使の様な笑みを浮かべた姫乃が居た。


「ふふっ、揶揄ってごめんなさい。元はと言えば私が誘ったのですし、ちゃんとこの世界で住める様に手伝います。明日私が推薦状を書きますので、それで登録はできる様になりますよ」

「おおお……貴女様は女神か」


 目の前の少女が女神に見えてきた。

 心なしか後光と天使の羽が舞っている様に見えるのは俺の幻覚……だなうん。


 そこで俺は、姫乃が口をモニョモニョして恥ずかしそうにしていることに気づく。


「……どしたん?」

「え、あ、えっとですね……」


 姫乃が若干吃るものの、何回か深呼吸した後で覚悟を決めた様に口を開いた。



「———わ、私の家に来ませんかっ!」



 ……やはり姫乃は女神だったらしい。


 因みにこの後、逆に俺が日本の最上級の礼である土下座というものをして泊めてもらうこととなった。



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