九重結菜、吠える
それから大勢で移動して、元の
「さて、キリキリ白状してくれ」
佐和くんが、同級生だというフードの男──田中くんに対して言う。彼は同級生といっても隣の学級の生徒らしく、転校生である結菜にとっては知らない人だった。だが、佐和くんにとっては見知った友達らしく、気負うような気配はない。
田中くんはいま、地面に正座させられている。そして彼の
──もしかして、桜吹雪を見せつける必要があるだろうか。
ふと馬鹿な想像が
「実は──」
田中くんの口から、今回の件について、おおよそのあらましを聞く。ゴニョゴニョと要領を得ない話し口ではあったが、内容としては単純だった。
「要するに、田中くんの一方的な片思いだと?」
結菜がそう結論づけると、その場にいる全員が一斉にこちらを見てくる。
田中くんが言うことには──彼はとある日に、公園で落とし物を拾い、その持ち主だと思われた女子に声をかけた。すると、たちまちに恋に落ちたらしい。
「けど、俺がすっげえ警戒されてたのは分かってたし……しかもなんか、
けれど恋は
「だから目安箱に
「なるほど、そういうこと」
佐和くんが、
「でもなんで
「ダチに恋バナするなんて恥ずかしいじゃねぇか……」
「あー田中くん、シャイだかんなぁ」
男子二人がなんとも
佐和くんは得心がいったという風に納得しているが、しかし、結菜としては鼻についてしまう。なんだか田中くんの言い分が随分と勝手なものに思えて仕方ない。だからつい言ってしまった。
「けど、やってることはつきまといですよ?」
田中くんが「ギクゥ」という
「ストーキングは犯罪です」
「……はい」
「設楽さんがどれだけ怖い思いをしたか……あなたは想像したことありますか?」
「あ……名前、設楽さんっていうんだ……」
「
「あ、はい」
話していると段々とムカっ腹が立ってきた。
「だいだい、なんですかそのフードは?」
「え、フード?」
「そんなふうに
「
「深夜徘徊でのフード被りはファッションとは言わないんですよっ」
しかし仕方がない。
なんといっても、とぼけている。
結菜が湧き出てくる
「いいですか。恋をするなとは言いません。けれど
「あの……九重さん、落ち着いて」
「佐和くんは黙ってください」
「はい」
口を挟んでくる佐和くんに、
「佐和くんも、です」
「え……? あ、うん、いやはい」
「なんなのですか、あの
「あの……茶番とは?」
「そちらの方達と、楽しそうにヒーローごっこをしていたではないですか」
「ああいや、あれはちょっとしたユーモアで……みんなの緊張が
「ユーモアと言い張れば、どんなおふざけをしてもいいとはならないんですよ?」
結菜が
「あなた達、そこに
激情に身を任せぬよう、
するとどういうことか。その場にいる全員が居並んでしまった。佐和くんと田中くんの二人に言いつけたつもりであったが、ヤンキー達までもが結菜の前に、正座で、
結菜はそんな異様な光景に
「全員、きつくお説教です」
手始めに「まじか……
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