九重結菜、ヤンキーへの認識を改める①
「ことの
結菜はそのように宣言すると、ついには納得することを
「いつの間にかに、人もたくさんいますし……」
結菜達は現在、ヤンキー集団と合流して、彼らの事情を聞いている最中であった。公園の
「話してみたら気のいい奴らばかりでさ、九重さんが心配する必要はないと思うよ」
すっかりヤンキーの集団の中に混じってしまっている佐和くんが言う。
なぜか馬が合った様子の佐和くんとヤンキー達であるが、その理由を尋ねてみても、ちっとも話が見えてこなかった。当の本人達は「
それなので──
「こんばんわ。私は九重結菜と言います、あなたの名前は?」
「あっはい、こんばんわ。
話にならない男どもは放っておき、結菜は一人だけ所在なさげにしていた女子に声をかけた。ブレザー服のおさげ髪。結菜には見慣れないが、おそらくどこかの学校制服なのだろう。変に着崩したりはしないながらも、気取らない可愛さがある少女だった。歳のころは結菜と同じくらいかと思われたが、尋ねてみると結菜よりも二つ年下らしい。
「それでもう一度だけ確認をさせて欲しいのですが、設楽さんは決して
「はっはい。むしろ皆さんにはとてもよくしていただいて」
結菜が最初に彼女を視認したときは、ヤンキーの一団に
それどころか設楽さんは、彼らのことを
「お兄さん達には助けてもらってばかりで、本当に感謝しかありません」
「助けて……ですか。よければ、その辺のお話を聞かせてもらっても構いませんか?」
ヤンキー集団と少女という、あまり
「その……じつは──」
すると彼女は
「──私は中学三年生になって、通いたいと思う高校があったから
それは、彼女が夜遅い時間ながらに、この公園にいた理由である。
彼女の家は兄弟の多いご家庭なのだそうで、まだオシメも取れない妹もいることから、自分の習い事によって両親に負担をかけることは
「最初はころは大丈夫だと、そう思っていたんです。もうすぐ十五歳にもなるんだし、自分一人で夜道を行くくらい……何かあったとしても、道行く人に助けを求めるぐらいはできるだろうって……でも──」
設楽さんはそこで一度、
「あの日、とても怖い思いをしたんです」
●
あの日は、どうしても分からない問題があって、塾講師の先生に解説を聞きに行ったんです。その分だけ帰りの時間が遅くなってしまって、足早に帰路についている最中でした。
「それでも……少しぐらいは
家に帰ったらずっと誰かがいる。
それは、私にとっては当たり前の日常で、ありがたいことなのかもしれないですけど……私にだって一人になりたいときもあるんです。
だから、いつものように、塾帰りの寄り道をしました。
お池公園の長椅子。
そこに座って、今日の授業は退屈だったなぁ、なんてぼんやりするひとときが私の一日の終わりの楽しみでした。兄弟達に邪魔されることもなく、一人だけの思考に没頭できる時間なんて、私にとっては貴重でしたから。
そんな風に一人の夜にも慣れてきて、不気味だった真夜中の公園も今では味のあるものに感じられてきたなぁ、なんて考えているときでした。
「あの……」
「えっあ、はい」
後ろから声をかけられたんです。
「これ落としましたよ?」
「えっ……いや、ごめんなさい。これは私のじゃありません」
その男の人はフードを
「あの……どうかしましたか?」
「え、あ、いや」
でも、その男の人はずっとそこに立ったまま、声をかけても、ずっと私のことを見るばかりだったんです。
不気味に思った私は、長椅子から立ち上がって帰ろうとしました。
そうしたら──
「あっあの名前を教え──」
「きゃっ⁉︎」
肩をつかまれたんです。
私はびっくりしてしまって、そのまま力一杯に走りだしました。けど、後ろから「待ってくれっ」なんて声が聞こえてきて、その男の人が追いかけてきているみたいだったんです。
私、本当に怖くなってしまって……もう泣きそうになりながら、パニックになりました。だから、とにかく誰でもいいから助けを求めるつもりで、走って走って……そうして遊歩道の先に、人だかりができている場所へと思わず飛び込んだんです。
「た、た……助けてっ」
「んぁ? お姉ちゃん、どうかしたん?」
そこにいた人達は、とても
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます