第一話 エピローグ
サービスマン、パシる
高校の学舎に、昼休みを告げるチャイムが鳴る。
それに合わせて教室を飛び出した大輔は、
「ご苦労、サービスマン。助かるよ」
「うす、ついでに飲み物も購入してきやした」
「お、気がきくね」
女子生徒と軽く会話をこなすと、依頼を完了する。
そうなると用はなくなるため、大輔は自らが所属するクラスへと戻った。
「おー佐和、戻ったか」
「おう」
「急に飛び出していったから
同じクラスに振り分けられてから、何かと付き合いのある友人より声をかけられる。そいつと話をするために、隣の席を
「三年の先輩からチョココロネを買ってこいと言われてな、意外と人気ある商品だから、売り切れる前にと思ってダッシュした」
「お前、それパシリじゃん」
「そうだけど?」
「そうだけど? じゃねぇよ。大丈夫か?
「勝手に心配されて、勝手に納得されても困るぞ」
友人から
「それに『対価』はキチンともらってるからな、タダで働いているわけじゃない」
「なんだ、ついに天下のサービスマンも金をとるようになったのか?」
「そういう意味じゃねえ」
その三年生の女子生徒は、どうしても席を外せない用事があるからと、ランチのおつかいを大輔に頼んできたのだ。もちろんチョココロネ分の代金だっていただいている。確かに気安く便利使いされている感は否めないが、決して
そのように言い訳じみた説明をするも、聞いている友人はあまり興味がなさそうだった。
大輔は
「そういえば佐和よ」
「なぁん?」
口に食べ物を含みながらの返答であったために、口調が雑になるも、友人は気にとめることなく大輔にそれを尋ねてきた。
「九重さんとは
「んっ……と。そういうわけではない」
チキンカツを
聞かれたのはクラスのマドンナとの関係についてだった。
九重さんの容姿というのは
実際には二人して、ひまりちゃんの『呪い』を解くために
そして今では「二人はデキている」なんて結論が面白おかしく
「でも最近はあんまり二人でいないじゃないか、あんなに一緒だったのに、夕暮れはもう違う色なのか?」
「何を言ってんだよ
友人の軽口にとりあえず釘を刺しておく。
そして仕方ないので、大輔が九重さんと一緒にいたのは『サービスマン』の活動に関連する出来事だったと教えておいた。
すると友人は「なるほど。それなら……俺の気のせいかもしれんが」と前置きをつけて言う。
「なんだかよ、九重さんが佐和を見る目、時々だがすげー
「ああ〜……お前もそう思う?」
頭を抱え込んで問うと、友人は「思う思う」と深く同意してくる。
それは最近の九重さんが見せる顔である。
決して
「あれ
「やめろぃ、
ようやく『呪い』だのなんだのと、生臭い話から離れられたばかりだ。物騒な話には当分近寄りたくない。そのように
九重さんである。
彼女はその
「どうかしましたか?」
そして
そんな何気ない仕草が
大輔は「いや、何にもないよ」と答える。
「何か用事かな?」
「いえ、先日から伝えている通り──今日から面会謝絶が解かれるので、放課後一緒に『お見舞い』にきて欲しいんですよ」
大輔が問いかけると気負わないような返事があった。
思い返してみれば、九重さんとここまでの関係性を築きあげるのには時間がかかったような気がする。出会った当初、彼女には過分に
そんなことがなんだか嬉しくて、大輔は万感の思いを込めて言うのだ。
「もちろん、俺でよければ喜んで。久しぶりに会えるのが楽しみだ」
すると、九重さんは朗らかだった笑みをさらに深める。
「会えるのが楽しみだとは言いますが、その言葉に、
それはもう、いっそ
大輔も思わず小便を漏らしそうだったが、気合いで堪えた。
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