サービスマン、美人姉妹を助ける⑤
大輔はそこで一度振り向いて、藤堂さんへと声をかける。
「藤堂さん、ひまりちゃんにかけられている『
それは重要事項の再確認である。
その呪文については大事な要因であるからには、一言一句たりとも間違うわけにはいかない。
藤堂さんは疑問を挟むことなく返答してくれる。
「『世界中の美女をすべて我が手中に』です」
「ありがとう」
大輔はもらった言葉を
『世界中の美女をすべて我が手中に』
その呪文は、通称『ジョンドゥの呪い』と呼ばれている。
ひまりちゃんの身に巣食ったふざけた呪いだ。ただ
問題とすべきなのは、その『呪い』の強大さである。
大量の人間の命を対価にして発動されたその呪いは、対抗し消滅させようとなると、これもまた大勢の命を必要とする。並大抵の力では
しかしそれでも、大輔はひまりちゃんを助けると約束した。
だから不可能を可能とするための妙案がないか、考えに考え抜いた。
そして一つの思いつきに至る。
──それならいっそ『呪い』を受け入れるのはどうだろう?
大輔が思いついたそれは
そもそもな話ではあるが、ひまりちゃんの身に降りかかった『呪い』というのは、本来ならば彼女の生命を
端的に言うと『美女を手に入れたい』と願っているだけなのである。それがどうしたことか、ヘンテコな事態の
ということはつまりだ。
ひまりちゃんが
──『呪い』に反抗することなく、本来の目的を達成させれば、ひまりちゃんは助かる。
しかし、その案には一つ致命的な問題がある。
──つまりその一点さえどうにかできれば。たとえばそう、生きている誰かが願い主へと成り代わることができれば、問題は解決するのではないか?
そのような
大輔は思考を切りあげると、顔を上げて前を見る。
そこには、ひまりちゃんに
不浄なるそいつには
もちろん『呪い』に自我なんてなく、
だからつい言葉をかけてしまう。
「今からお前に、新しい役目を与えてやる」
返答なんてない。
そいつはただ、大輔には興味を示さずにウゴウゴとしているだけであった。
べつにそれでいい。
これでもう準備は整った。
『いと
大輔は大きく息を吸い込むと、その『
『
右の
けれど
『我が命をもってあがなうが
両腕を
掌の中からは溢れんばかりの光が漏れ出していた。
『どうか願いを叶えたまえ──』
漏れていく光は徐々に周囲を飲み込んでいく。
そんな幻想的な光景のもと、誰もが言葉を失くしている中で一人、大輔はそれを唱える。
──ひまりちゃんにかけられている『呪文』を変更する
すると一際に
その光が無くならないうちに、大輔は矢継ぎ早に告げた。
──『世界中の美女をすべて【俺の】手中に』
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