サービスマン、紹介する
土曜日の正午ごろ。
市民病院の玄関ロビーにおいて待ち合わせをしていた。その病院は大輔が住む街において一番大きな
「こんにちは佐和くん、お久しぶりですね」
「藤堂さん、こんにちは」
ロビーチェアに腰掛けていると、エントランスに入ってきた人物から声をかけられる。大輔が立ち上がり「ご
相手は名前を
綺麗に整えられた化粧に、春らしくカールした髪。
「藤堂さんの職場はオフィスカジュアルとは
「いいえ。むしろ、お堅いイメージ払拭のためにも
「そうなんですか……」
それではどうしてそんな似合わない格好をしているのだろうと、疑問に思うが、それをそのまま口に出していいいものなのか迷う。するとそんな内心を察知されたのか「TPOを
「つまり今日という日は、藤堂さんが
「そんなに
藤堂さんは「服の
お姉さんが楽しそうでなによりである。
「それでは、報告にありました呪いを
「はい、入院しているみたいです」
今日は九重さんの妹さん、ひまりちゃんとの面会を予定している。
彼女は先日、街を散策した際に倒れ込み、救急車によって
「かわいそうに。若い
「まったくもって」
藤堂さんの同情の言葉には同意するばかりだ。
「お待たせしましたっ」
藤堂さんと世間話を続けていると、上階から階段を降りてくる人物がいる。
九重さんだ。
藤堂さんが来院したのを受けて「一階のロビーにいる」というメッセージを彼女に送ったのだ。きっと病室にいたのだろう彼女は、急いで降りてきたのか、軽く息を整えている。
「やあ、今日もよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします──あの……佐和くん。この人が?」
大輔が紹介しようとすると、藤堂さんが前に出る。
「初めまして、私、藤堂純香といいます」
自然な動作で
それを受けた九重さんはワタワタとしている。
高校生の身分で名刺交換なんて
「こら、佐和くん。女の子に
「へえ、つい」
藤堂さんから
どうやら、ふざけすぎたようだ。
九重さんからも
「な……ないかく?」
野球用語かなと一瞬思った。高めのインコース。だが「
「ああ、いえ。
「でもでも……
「ふふ、ありがとうございます。そう言われるとなんだか
なにやら女子二人で
そうなると
しばらくはそのように
「さて、楽しいおしゃべりはここまでにして、そろそろ向かいましょう。頼られたからには仕事はします」
仕事人としてのメリハリなのだろうか、藤堂さんの雰囲気が引き締められる。
「とくに佐和くんは病気の娘を救いに来たのでしょう? 嵐の夜に最後の
きっと
大輔は補足説明をする気持ちで言う。
「また分かりにくいインテリジョークを……古い小説だね。オーヘンリーとはまた
ふと言葉に詰まると、
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
──そのオチだと、俺の方が死んじゃうじゃないですか。
そんな言葉が口をついて出そうになったのだが、
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