九重結菜、不思議な男に出会う③
それは不思議な光だった。
辺りを
──さっきのお守りだ。
そう思い至りはするものの何もすることはできない。ただ幻想的な光景を眺めるだけしかできない。すると動きがあった。光が流動し一つ箇所へと収束しだしたのだ。小さく輝く粒子達が妹の小さな身体を包み込んでいく。そして全身を覆い尽くしたかと思うと、パッと掻き消えるようにして散っていった。
やがて光は最初からなかったかのように消え去って、少しの間、静寂の時間が過ぎた。
結菜は驚きに声が出せないままだった。
●
「おねえ……ちゃん」
「ひまりっ」
妹の声がして我にかえる。
ひまりが目を開けて結菜を見ていた。
「ひまり、大丈夫なの?」
「くるしく……ない、よ」
結菜は気がつくと妹の身を
「なんだか、とっても……きもちいかった」
「ああ……よかった……よかった」
目に涙が
一時は本当にダメかと思った。生気を失う姿を見て焦りが募った。しくじってばかりの自分を呪いもした。しかし妹はこうして無事に生きている。その事実が何よりも結菜を安堵させる。
抱きしめる腕に力が入ると、妹が「んきゅ」と可愛らしく鳴いた。
「なんとかなった──かな?」
声が聞こえてハッとする。
見上げると男性が自分達姉妹を見ていた。
「あっ──ありがとうっ」
精一杯に頭を下げる。
彼がいなければ今頃どうなっていたかなど想像にしたくなく、最大限の礼を示すのは当然のことだった。すると頭を上げてくれという声が聞こえるが、とてもではないが言葉通りになんてできない。恩人への礼の示し方を結菜は他に知らない。
すると男性は何やら困ったような呻き声をあげる。やがて「あっそうだほら薬。飲ませてたって言ってたお薬。それが効いてきたみたいですね」なんてごまかしまで言い始めた。
それは確かに
結菜が頑なに平身低頭していると男性は「まいったな」とぼやく。
そのまま延々と状況が硬直したままになるかと思われ始めたとき、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。甲高く響くその音は、段々とこちらへと近づいてくる。
「あ、救急車が来たみたいですね。誘導してきます」
男性がそれ幸いと身を
それに慌ててまってくれと声をかけた。
「あっあの──どうか名前を教えてくださいっ」
どうしてそんな質問をしたのかは分からない。気が動転していて、咄嗟に思いつけたのはそれだけだったのだ。もしかしたら「名のるほどではない」などと定番のセリフを言われるかもしれない。そんなふうに身構える。
しかし彼は一瞬だけ呆けたような顔をするも、やがて破顔して答えてくれた。
「
そのクチャクチャに
だが、今の結菜にはその感情が何なのか確かめる
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