第19話 羽柴ともう一度【九条side 】
雨はどんどん強くなっていって、さすがに傘を差さずに歩くのは無理があるよな。
ガレットの事は心配だけど、先にコンビニに寄って傘を買う。
そしてコンビニから出ると、さっきまでは小雨だったはずなのに、バケツをひっくり返したみたいなどしゃ降りになっていた。
間一髪。あのままだったら、ガレットを探すどころじゃなかったかも。
けどこんな雨の中、ガレットはちゃんと無事でいるかな?
そんな不安な気持ちを押さえながら傘をさして、ガレットの捜索に戻った。
ガレットには、本当に悪いことをしたって思ってる。
あの時はつい勢いでお前のせいだなんて言ったけど、それは違う。
ずっと羽柴が無理をしていたのに気づけなかったのは、俺のせいだ。
さらに追い討ちを掛けたのが、羽柴に好きなやつがいるってこと。そいつのために犬嫌いを治そうとしてたって聞いたら、胸の奥がモヤモヤして、嫌な気持ちになって。気がつけばガレットに当たっちまってた。
くそ、ガレットは全然悪くねーじゃん。俺が勝手に腹を立てただけだって言うのに。
「ガレット、怒ってるよな」
漏れた呟きは、雨の音でかき消される。
けど、へこんでる場合じゃないな。ちゃんと謝るためにも、まずはガレットを見つけないと。
商店街の中を歩き回り、建物の隙間を覗きこんでガレットの名前を呼んでみるも、反応は無い。
近くを通る人が変な目で見てくるけど、構わなかった。
羽柴だって探すの手伝ってくれているんだ。俺だって頑張らないと。
「けど羽柴、本当に大丈夫かなあ?」
思い出すのは一週間前の、ドッグカフェでの一件。
怖がって気絶するくらいなんだから、羽柴の犬嫌いは相当なものだ。
もしも羽柴がガレットを見つけたとしても、捕まえられるかどうか。
けどすごいのはそこまで苦手なのにも関わらず、探すのを手伝ってくれたこと。
俺やガレットの事なんて、放っておいてもいい。それが普通なのに、何の迷いもなく探すと言ってくれた羽柴は、やっぱり凄いわ。
そんな羽柴だから、俺は好きになったんだ。
今はギクシャクしてるけど、やっぱりこのままってのは嫌だな。
「……ガレットが見つかったら、もう一度ちゃんと話をしてみよう」
その為にも、まずは一刻も早く見つけないと。
俺は商店街の散策を終えて、他に行きそうな場所を探し始めた。
だけどまさか、ガレットがあんな事になっているなんて。
この時の俺は、考えもしなかった……。
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