第16話 いつかまた

「それで?はしゃいでアンタたち2人は食べ物をなんっにも買ってこなかったと…」


 そう言うユイの口調には明らかに怒りが含まれていた。おそらくだがガチで怒ってる。


「すまん、久しぶりでつい……」


「子供かっ!!」


 するとサクラが2人に頭を下げた。


「2人とも本当にごめんなさい!わたあめならあるから……」


「それはアンタが食べたいだけでしょ?」


「あ、あぅぅ……」


 玉砕である……


 そんな俺たちにエリが間に入る。


「楽しければそれで良いじゃないですかユイさん」


「いいや!エリ、サクラは一回甘やかすと図にのるタイプなの!」


 その言葉にサクラが反応する。


「そ、そんなことないもん!」


「そんなことあるわよ!この前だってワタシの分のプリン勝手に食べたの見逃したら今度は勝手にワタシが大事にしてたお菓子全部食べたじゃない!!」


「へー、案外食うの好きなんだなサクラは」


 俺がそう言うとサクラはみるみるうちに顔を真っ赤になった。


「えっ、あの…あうぅ…」


 そのままうずくまってしまった…


「そんなこと言ってユイさん、2人がどうせろくなもの買わないからって食べ物多めに買ってたじゃないですか」


 エリがそう言った瞬間、時間が止まった。


 しかしその直後、ユイがエリに詰め寄る。


「な、なな、なんで今それ言っちゃのよ!?」


「そろそろ言ったほうが面白いと思ったので」


 そう言うエリの顔はニヤけていた。エリはたまにこういうことをする。


 動揺しているユイにサクラが声をかける。


「お姉ちゃん、それ本当?」


 するとユイはやれやれと肩を下げて話し始める。


「そうよ、だってアンタ学校ではお嬢様してるじゃない。だからこういう時くらい羽目外すかなって思ったのよ」


「お姉ちゃん…大好きっ!」


 そう言ってサクラがユイに抱きつく。


「ちょ、サクラ!?急に抱き付かないで!」


「えへへぇ…」


 そんな微笑ましい光景を見ていると、エリが俺に話しかけてきた。


「姉妹とか兄弟ってやっぱりいいものですね」


「そうだな、でも俺は昔なんとなくお前のこと姉みたいに思ってたな」


 するとエリが目を輝かせて言った。


「本当ですかっ!今もですか!?」


「今は流石に思ってないよ。けど信頼はしてる」


「そうですか…」


 なんで残念そうなんだよ!?


 ・・・・・・


「楽しかったですね、トシヤ」


「そうだな」


 ユイとサクラと解散し、俺はエリと2人帰り道を歩いていた。


「でも驚きでした」


「何がだ?」


「サクラさん、てっきりトシヤとはまだ打ち解け切れてないと思ってました。ですが、今日のサクラさんトシヤといてとても楽しそうでしたから」


「なんだそんなことか、まぁサクラからしたら友達の友達で姉の友達だから別に他人って訳でもないしな」


「フフッ、確かにそうですね」


 そう言ってエリはンーと伸び、そして言った。


「私、今年の夏は沢山のことをしたいと思ってます。だから着いてきてくださいね?」


 俺はその言葉を二つ返事で快諾した。


 エリと、そしてユイとサクラと一緒なら何でも出来る気がした帰り道だった。

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