第15話 一歩前進
「と、いうわけで……サクラはもう買いたいもの決まってたりするのか?」
「そうですね、わたあめは食べたいです」
「サクラ子供舌だもんな」
俺がそう揶揄うとサクラは頬を膨らませて言った。
「もう!トシヤさん、意外と意地悪です」
「悪かったよ、わたあめ買ってやるからさ」
「本当ですか!ありがとうございます」
そう言ってサクラはフワリと微笑んだ。
コイツ、子供っぽいんだか大人っぽいんだかよく分からんな……
・・・・・・
「ありがとうございます♪」
「別にわたあめの一個くらい感謝されるほどでもないよ。さて次は……」
そこまで言って俺はサクラが何かを見つめていることに気づいた。あれは……
「ヨーヨー釣り?やりたいのか?」
「えっ!?あっ、はい……」
サクラはそう、顔を赤ながら答える。
「だったらやろうぜ。次の機会があるかも分かんないしな」
そして俺たちはヨーヨー釣りのおっちゃんから釣るアレ、名前分かんないけどアレを貰って何を狙うか見定めていたところサクラが俺に尋ねてきた。
「これ、何をどうすればいいんですか?」
その瞬間、俺に電流が走った。
「サクラまさか、やったことないのか?」
「はい……お姉ちゃんが勿体無いから辞めなさいって言うので」
「アイツが?なんか意外だな、むしろアイツはこういうの好きそうなのに」
するとサクラはフフッと笑うと俺の方を向いて話し始める。
「実はお姉ちゃん、中学校までは真面目だったんですよ?毎年学級委員長に自分から立候補して周りからの人望も厚かったんです。私はそんなお姉ちゃんの後ろをついて回るだけでした」
「私はなんとなくそんな毎日が続くと何となく思ってました……だけど受験期に入って、お姉ちゃんが急に私とは違う高校に行くことを決めたんです」
「理由はもっとやりたいことをやるからだそうです。男の人が苦手な私は追いていけなくて結局2人別々の高校、そしてお姉ちゃんは今のお姉ちゃんになったんです」
そこまで言うとサクラは一つため息を吐くと、どこか寂しげな表情を浮かべて言った。
「お姉ちゃんはどんどん変わってやりたい事をやってるのに、私は今でも内気で殻に篭ったまま……なんだか情けないです」
そんなサクラに俺は正直に思ったことを伝えることにした。
「だとしたら、このヨーヨー釣りで一歩前進だな」
「……え?」
「やりたいこととか、変えたいことを実際に行動する大変さは俺はよく知ってる。だからこそ俺はサクラなら変われるって思うんだ」
「だから、もしサクラが何かしようとして躊躇するなら俺に言ってくれ。いつでも助けになるから」
するとサクラはうっすらと目に涙を浮かべて言った。
「……はい、ありがとうございます。トシヤさん」
・・・・・・
「ヨーヨー釣り、あんなに楽しいんですね!」
私はヨーヨー風船を手で跳ねさせながら上機嫌でトシヤさんにそう言った。
「そんなに喜んでくれるなら一緒に遊んだ甲斐があるな」
「はい!またお願いしますね、トシヤさん」
そして私たちは談笑しながら集合場所へと向かった。けれど、その途中私はあることに気がついた。
そういえば私、トシヤさんとは気兼ねなく喋れてる……何でだろう?
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