第14話 夏祭り
「夏祭り?ああ、そういえば今週だったな」
「そうなんです。せっかくの機会ですし一緒にいけたらと思うのですけど……」
そう言ってエリは俺に視線をぶつける。その瞳はまるでモノをねだる子供のようにまっすぐだった。
「いいんじゃないか?ユイとサクラは俺の方から誘っておくから」
「そ、そうですね……人数は多い方が楽しいですしね。お願いしますね……」
あれ?何だかトーンが下がったような気がする。でもとにかく2人に連絡しておかないとな!
・・・・・・
そして、夏祭り当日!なのだが……
「まさか浴衣を着ることになるとはな」
「お客様大変お似合いですよ。やはり夏はよく浴衣が映えます」
俺は店の人にそう言われて頭を下げる。
「お客様、お連れ様がお見えになりましたよ」
そう言われて俺は足音のする方を向く。そこにはエリがいた。
エリは淡い水色が主体の浴衣を着ていて、華奢なエリにどこか儚さを与えていた。俺はそれをただ見つめていた。
「あの、トシヤ?」
「ど、どうした?」
「あんまりジッと見られると恥ずかしいのですけど……」
そう言ってエリは頬を赤らめる。
俺はそんなエリに正直に感想を伝える。ユイももっと自分を伝えろって言ってたしな。
「めっちゃ、似合ってるぞ。なんかマジで芸術って感じで、すげぇ綺麗だし可愛いし……」
そこまで言うとエリは俺の袖を掴んで顔を伏せて言った。
「も、もう大丈夫です!これ以上はちょっと、恥ずかしいです……」
そう言われて周りを見渡すと、店中の人間が俺たちを見て笑顔を浮かべていた。
いたたまれなくなった俺は、エリの手首を掴んでそそくさとその場を後にした。
・・・・・・
そうしてユイとサクラとの待ち合わせ場所に行くと、そこには既に2人がいた。
「あっ!おーい!トシヤ!エリ!」
そう言ってユイがブンブンと手を振る。
俺たちはそれに応えるように小走りで2人に駆け寄る。
「悪い、待たせたか?」
「別に、待ってないわよ」
「なら良かった……ってその服」
ユイが着ていたのは前に俺と一緒にいた時に買った服だった。
「あっ!気づいた?どう、トシヤ?」
そう言ってユイはその場でクルッと一回転する。それと同時に白のワンピースがふわりと舞った。
「うん、やっぱりすげぇ似合ってる。でも白の服汚すなよ?」
「汚さないわよ!子供扱いすんなっての!」
そんな不毛な言い争いをサクラが止めに入る。
「2人とも、そろそろ花火始まっちゃうよ?」
「そうだな、だとしたら早いとこ会場行くか」
そう言って歩き出そうとする俺をユイが制止する。
「まあまあ、慌てなさんなトシヤさん」
何故に江戸っ子風?
「言ってやんなサクラ」
「えっ!?わ、私!?えと、実はこの近くに私たちしか知らない秘密の場所があるからそこで見るのはどうかなって……」
「なるほどな、じゃあだとしたら逆に時間があるな……屋台見て回るか?」
「それなら買い出しは2人1組で良いヤツ買った方が勝ちってのはどう?」
ガキかよ……
「ガキかよ」
「なんか言った?」ギロ
「な……何でもないです。エリもそれでいいだろ?」
突然の振りにエリは笑顔で答える。
「ええ、そういった趣向も面白そうです」
「じゃあ決定だな。メンバーは……」
「ワタシがトシヤと組むわ!」
「私がトシヤと組みます」
まさかの指名被りだ。エリとユイは互い見つめ合って弁論を始める。
「だってワタシとトシヤは同じ学校の同級生!当然の組み合わせでしょ?」
「それで言うなら私はトシヤと同じ屋根の下で暮らしています。妥当性でいうならこちらが上だと思いますよ?」
そして2人同時に俺の方を向く。その目は確実にどっちか決めろと訴えていた。
「そ、そうだな……お前ら2人とは普段から話してるから……今回はサクラと一緒に回らせてもらうよ」
突然の指名を受けたサクラは目を丸くして答える。
「えぇ!?私でいいんですか?」
「むしろこんな機会ないとじっくり話すことないだろ?」
「そうですね、それならよろしくしますね♪」
そのやり取りを見てた2人は何だか不服そうだった。すまない……
そんな訳で次回、買い出しバトル開催!?
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