7

家の引っ越し作業を大人数でワイワイと手伝ってくれ、私は1人で本当にテレビを見ながら大笑いしていた。




それから、夕方・・・




大きなレジャーシートを何枚も何枚も合わせ、近所にある土手にみんなで座る。




私の大好きなお父さんとお母さん・・・。




そして、お兄ちゃんと、彼女さんになった女性と3人の子ども達。




法律事務所の人達、障がい者施設の利用者の方達とそのご家族。




さらに・・・




「すげー大所帯だな!!!!

・・・真知子、大丈夫かよ!?」



私の大嫌いな葛西が赤ちゃんを抱っこ紐で抱っこして、真知ちゃんの手を引き歩いてきた。

それには笑う。

めちゃくちゃ良いパパをしていて毎回笑う。

しかも娘だったから溺愛しすぎてて毎回爆笑してしまう。




「悠さんのお友達だったら大丈夫だと思う・・・。」




よく家にも遊びに行っている真知ちゃんがそんな嬉しいことを言ってくれ、空いているシートの所に座った。




さらに、さらに・・・




凛さんの妹さん夫婦とおじいさん、凛さんのお母さんお父さんと・・・真知ちゃんのご両親まで加わり・・・。




私の周りにはとんでもない人数になっていて・・・。




「お腹、大丈夫?」




凛さんが私のお腹を撫でながら心配そうな顔をしている。

それに笑いかけ、隣に座る凛さんに少しもたれかかった。




「私に何かあってもこんなにも多くの人達がいるから大丈夫だよ、凛さん。」




「・・・凄い人数になったね?」




「だから、誰か1人に何かがあっても必ず誰かが助けてくれる。」




凛さんを見ながらそう言うと凛さんは優しい笑顔で頷いた。




その時・・・




花火の打ち上がる音が聞こえ・・・




夜空に大きな綺麗な花火が・・・。




それから一拍置き、身体の底まで震えるような大きな大きな音がして・・・




私の手を、凛さんが握った・・・。




その手を私も握り返す・・・。




それから次々と夜空に花火が上がり、大きな大きな花火の音も重なる・・・。




そして、凛さんが花火を見上げながら言った。




「やっぱり、心臓の音みたいだな。」




「まだ嫌い?」




「俺1人の心臓の音だけではなくて、みんなの心臓の音みたいに聞こえる。」




「それは私も思ってた。」




「みんなの花火の音が重なっているね。

大きくて、震えるくらい・・・。」




「この先、いつか誰か1人の花火の音が終わる時が来るけど・・・きっと大丈夫。

なんとなくしっかりするくらいで大丈夫だよ、凛さん。」




私がそう言うと、凛さんは私の手から手を離し私の肩を優しく抱き寄せた。




「それでも、他の人の花火の音は続いてくからね。

悠ちゃんがそう教えてくれた。」




「元々は“先生”が教えてくれたんだけどね?」




「その元々も悠ちゃんが気付かせてくれたからな。」




2人で笑いながら夜空に輝く花火を見上げる。

私達の周りに集まるように座った人達の花火の音は、きっと本物の花火の音のように重なっているはず。




「だからきっと大丈夫。

花火の音は終わることがないよ。

ずっと続いていく・・・。」




そう言いながら私がお腹に手をのせると、凛さんが私の手に優しく手を重ねてくれた。




「うん、花火の音は終わらないね・・・。」




そう言って優しく笑う凛さんの胸に耳を当てる。

健康診断が今年もオールAだった凛さん38歳の花火の音は、しっかりと鳴っている・・・。


















「でも、俺の花火の音が終わるまでは抱き締めてくれるんだよね・・・!?」









これには笑う。

花火の音にも負けないくらい大笑いしてしまった。











end.......

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