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あの後お茶も少し飲んでから私の実家を出た。

てっきり、近所だし日曜日だし凛さんの実家にも行くと思ったらそのまま凛さんの一人暮らしの部屋に戻ってきて・・・。




こうなった・・・。




面倒だったので汚れたシーツを2人でそのままにしていて・・・

その布団の上でまた強引に裸にされ・・・




「凛さんの実家にも寄ればよかったのに・・・。」




「うちは挨拶とかいらないから・・・」




凛さんが高級スーツをその場に脱ぎ捨てた。

必死に身体を隠す私の両手を強引に掴み、意地悪な笑顔で私の裸を見下ろしている。




「母さんから“何してるんだ”って連絡きたくらいだからね。」




「なにが・・・っ?」




私の上に覆い被さりながら首筋を食べる勢いで舐めてきて・・・




「父さんや子ども達のことに自分からは干渉しない母さんが、珍しく俺に電話を掛けてきて・・・。

“元木ちゃんアンタと別れてると思ってるよ?”って・・・。」




そう言った瞬間、痛いくらい凛さんが抱き締めてきた。




「本当に死ぬかと思った。

心臓が爆発して死ぬかと思った・・・っ」




「だって・・・、ごめん・・・。」




色々と言おうとしたけど、凛さんがこんな感じだしやめておいた。




でも、1つだけ・・・




「私のこと何でそんなに好きになったの?

それまで全然だったのに。」




お父さんとお母さんに会ってから話すと言っていたのに、凛さんは結局話さなかった。




「花火を見て・・・」




「花火って?花火大会?」




「ネコの“花火”・・・。」




「花火?死んじゃった日?」




「うん・・・。

花火みたいに死にたいと思った。

花火みたいに死ねるならいいと思った。」




凛さんが目に涙を溜めながら私を見詰める・・・




「悠ちゃんに抱き締められる“花火”を見て・・・。

花火の音が終わるまで抱き締めてもらいたいと思った。

俺のこともあんな風に抱き締めてもらいたいと思った。」




凛さんが目から涙を少し流し、それが私の顔に落ちてきた。

それに笑ながら私は両手を凛さんの背中に回す。




「泣くでもなくしっかりした顔で、笑いながら・・・明るく楽しくなんとなく。

そんな感じで抱き締められながら・・・俺の花火の音が終わるまで、抱き締められたいと思った。」




「私は長生きしなきゃね。」




「それは絶対にお願いしたい。

健康診断とかちゃんといってね?

お金を掛けて、オプション沢山追加して検査して?

俺も自分にはそこだけお金掛けてるし。」




「知ってるよ、その手配してるの私だもん。

オジサンだからかなって思ってたけど。」




私がそう言って笑うと、凛さんが意地悪な顔でまた私を見た。




「オジサンか確かめてみてよ。」

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