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凛さんはいつもみたいな優しいだけの顔ではなくて、恥ずかしそうな照れたような困ったような・・・複雑そうな顔で笑っている。
「僕はそのような感じの男で、全然良い男ではないのですが大丈夫でしょうか?
その・・・申し訳ないのですが、色々とご協力や助けていただくことも多いかと思います・・・。」
「それはもう、喜んで助けに行きます。
僕は途中で助けに行く勤務ではなくなりましたけど、人を助けに行く仕事を長年していましたから。」
「わたしも、できる・・・ことがあれば。
できなくても・・・やってみます。」
そう言ってお父さんもお母さんも嬉しそうな顔で笑い、凛さんは・・・優しいだけではない凛さんらしい笑顔で笑っていた。
「おひるごはん、たべ、ましょう?」
お母さんがそう言ってゆっくり立ち上がり・・・でも確実に数日前より歩けていて。
驚きながらお父さんを見るとお父さんは複雑そうな顔で凛さんをチラッと見て・・・
「葛西先生が格好良いから張り切ってて・・・。
数日前から急にルンルンしだしたんだよ。
新しい服が欲しいとか化粧品がどうとか、美容院にまで行って!」
その理由には凛さんと2人で大笑いした。
そして結構待ったけど、お母さんがいつもより震えていない手で持ってきたお皿・・・
そこには、冷やし中華が・・・。
「今日は絶対冷やし中華の気分だった!!
怖いね~!やっぱり母親は怖いね~!!」
お母さんが全部1人で作ったんだと思う。
キュウリもハムも卵も綺麗ではなくて・・・。
でもきっと、味は変わらないはず。
それに私の大好きなトマトは私にだけ沢山。
「あのひも・・・りんごあ、め、たべたかった・・・でしょ?」
「りんご飴?」
「はなび、たいかぃのひ・・・。
いかないって、いう・・・から、りんごあめだけ、かいにいったの・・・。」
それを聞き私は・・・泣いた・・・。
「・・・うそ、ごめん・・・っ私のせいじゃん!!
それだけ買いに行ったの!?
だから財布もスマホも持たないで・・・!?
お母さんがそうなったの、私のせいじゃん!!」
それには涙が止まらなくて・・・。
「ちが、う・・・。
はるかのおかげ・・・!!」
お母さんがいつもより力強くそう言った。
泣きながらお母さんを見ると、お母さんはしっかりした顔で私を見ている。
「たおれた、とき・・・すぐにまわりの、ひとたち・・・きゅうきゅしゃよんでくれて・・・」
「そっか・・・。」
「いえで・・・ひとりで、たおれるより・・・はっけんはやくなった。」
「よかった・・・っ!!」
「だから、はるかの・・・おかげ・・・。
ぜんぶ・・・。
うちが、こわれなかったのは・・・はるかのおかげ・・・。」
そんな風に思ってくれているなんて思わなくて・・・。
私はなんとなく乗り切っただけなのに、お母さんがそんなことを言ってくれて・・・。
久しぶりにこんなに泣いて・・・
泣きながら食べた冷やし中華は、お母さんの冷やし中華は・・・見た目は全然違うけど味は昔と変わらなかった。
まあ・・・市販のやつだから変わるはずもないんだけど。
「・・・なんで凛さんまで泣いてるの?」
何故か凛さんまで冷やし中華を号泣しながら食べていて、それには笑った。
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