10

1

そして、凛さん37歳。

土曜日にはこうなった・・・。




「凛さん、ここ?」




「はい・・・。」




死んだように2人で寝てお昼頃に起きると・・・

凛さんの腰は死亡していた。




私がドラッグストアで買ってきた湿布を、うつ伏せになっている凛さんの腰に貼っていく。




「オジサンじゃん!!」




「悠ちゃん本当に身体は大丈夫なの?」




「下半身の所は痛いよ!!

死ぬほどしたじゃん!!」




「・・・腰とか大丈夫なの?」




「私自身は1ミリも動いてないからね!!」




そう言ってから、湿布を貼った腰をバンッと叩いた。

それに悶える凛さん37歳、オジサンを見て笑った。




「今日はゴロゴロ過ごしてね!!」




「悠ちゃんもここにいてよ。

明日ここから一緒に行こう。」




「服とかないし。」




「明日途中で悠ちゃんの部屋に寄るから、今日は何も着なくていいんじゃない?」




「・・・そこは、凛さんの何かを貸してよ。」




焦ったり慌てたり意地悪になったり、こんなことまで言ってくる。




「ご飯とか面倒だから作らないよ?

コンビニでいい?」




「一緒に買いにいこうか。」




「その腰でどうやって歩くの!!

明日行けないなら無理しないでね!!」




「這ってでも行くよ。」




そう言って慌てた顔をしていて、それには笑う。








そして、日曜日・・・




「凄いね、よく回復したじゃん!!」




予定どおり1回私の部屋に寄ってくれ私服に着替え、凛さんと私の実家へと歩く。

凛さん37歳、腰が生き返った。




「昨日1日ゴロゴロして過ごしたからね。」




「たまにはゴロゴロするのもいいでしょ?

私の場合は結構ゴロゴロしてるけどいいの?

私、時間が許す限りゴロゴロしてるからね?」




そう言いながら凛さんを見る。




「私は“重い女”なの。

“家族が重い女”なの。」




「お母さんも元木もスレンダーだったけどね。

お父さんは凄い筋肉質だったけど。

悠ちゃん以外は太ったの?」




凛さんがそんなオジサンみたいな返しを真面目な顔をしてしてくる・・・。

これには・・・笑う・・・。




大笑いしながら歩いていたら、道に女の人がしゃがみこんでいる・・・。




絶対にまだ腰が痛い凛さん37歳を置いて、私は走って近寄った。




「大丈夫ですか?具合悪いですか?」




「あ・・・眼鏡が・・・。

さっき子どもとすれ違った時にぶつかって、落ちてしまって・・・ごめんなさい・・・。」




俯きながら喋る女の人・・・。

なんとなく見覚えがありよく見てみると・・・




「葛西の奥さん?」




「・・・あ、はい。」




葛西の奥さんが綺麗な顔を上げた。

でも目線は合っていないし、去年の12月とは随分様子も違う。

あんなに抱き付いてきたのに。




「真知ちゃん・・・お腹、痛いかな?」




凛さんが冷静な声でそう言って、葛西の奥さん・・・真知ちゃんの肩に手を少しのせた。

でもその手は少し震えているのに気付く。




そして真知ちゃんも苦しそうに身体を屈めてしまって・・・




「お腹って、妊娠?」




「うん、真知ちゃん妊娠していて。」




「さっき子どもとぶつかったみたい。

救急車呼ぶ。」




私がスマホを取り出した時・・・




「ごめんなさい・・・大丈夫です・・・。

お腹じゃなくて腕にぶつかって、その勢いで眼鏡が飛んでしまって・・・。」




真知ちゃんに言われ辺りを見渡したら眼鏡が道に落ちていた。

それを急いで拾い真知ちゃんの手に握らせる。




「お願い、念のため病院に行って。

葛西は?」




「そろそろ帰ってきます・・・。」




「鞄も持たずどこに行こうとしてたの?」




「そこの自販機に・・・。

サッパリした果物のジュースが飲みたくて。」




真知ちゃんが片手を開くと小銭が握られていた。

それを見て私の心臓が大きく大きく鳴る・・・。




「大切な大切な身体だからね?

勿論真知ちゃんの身体も大切だし、今お腹の中に新しい花火の音が鳴っているんでしょ?」




「花火・・・。」




「心臓の音!!

その小さな花火の音を守れるのは、今は真知ちゃんだけなの。

出掛ける時は少しの外出でも必ず鞄に身元が分かる物を持って外に出て?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る