9
1
─────────
──────
───
「大変だったかと聞かれたら大変だった。
でも、私には私の花火の音が鳴っているから。
どんなに大好きな家族であっても、私には家族とは違う花火の音が鳴っているから。」
そう言ってから、先生の心臓の上にも片手をのせる。
先生の心臓の上も花火の音で胸が震えている。
「“しっかりする。今は、しっかりする。”
“先生”がそう教えてくれたから。
だから、しっかりしなければいけない時だけは、私はしっかりしていられた。」
大好きな“先生”を見上げながら笑いかける。
「家族のことを事前に言わなくてごめんね。
こんなに大切なことを、最後のタイミングでやっと言ってごめんね。
私、やっぱり全然良い女じゃない。
先生のお母さんが言うとおり、私は“したたか”な女だね。」
自分で言って涙が流れてしまった。
先生の胸の上にのせた手は、先生の花火の音で震えている・・・。
それを感じながらゆっくりと手を離した・・・。
「抱いてくれてありがとう。
激しすぎて痛すぎたけど、幸せだったよ。
良い女じゃなくてよかった。
だから先生に・・・“凛さん”に抱いてもらえた。」
あれは“先生”ではなかったと思う。
だって全然違った。
彼女から聞いていた話と全然違った。
何も優しくなかったし、激しすぎたし・・・かなり自分本位だったと思う。
「あの・・・離してよ。」
私からの話は以上なのに、先生は私の背中や腰から両手を離さない。
それどころか・・・
「・・・っ痛いって!!!」
また痛いくらいに抱き締められる。
「次からは優しくするから。」
「次とかないから!!
早く私以外の良い女じゃない女に移ってよ!!
私だって連絡しなかったじゃん!!」
「“また今度”なんて、俺は送ったこともないよ。
それに悠ちゃんの“また今度”も残ってる。」
言い返そうと口を開けた時、その口を先生の口で優しく塞がれ・・・
「・・・ンーっっ!!」
抵抗しようとしても凄い力で・・・
でも、舌だけは優しくて・・・。
こんな感じのは初めてで力が抜けていく・・・。
「・・・こんな感じのでどう?」
「なにそれ・・・?」
「こういうのも出来るよ、俺。
この前ごめんね、なんだか酔ってたかも。」
「それは・・・そうかもしれないけど、次とかはない。」
「一先ず俺の部屋に行こうか。
ここだと他の人達にも聞こえるといけないからね。」
それを言われると・・・頷くしかない。
私は先生の前だと末っ子が出て来て叫んだりするから。
先生が去年の12月頃から頑張り始め、それから末っ子!!みたいな感じが事務所内でも出て来てしまった。
だって、爆弾を落としてきたから。
爆弾は“葛西”だから、“葛西”に負けないように話してしまう。
でも先生は優しいから・・・私があんな感じでも先生が私を嫌わないのも知っているから・・・。
いつものように優しく笑う先生に優しく手を引かれ、事務所を一緒に出た・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます