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そんな私の思いは数ヶ月で終わった。
「また連絡が来なくなったんだよね。」
先生が不思議そうな顔をしてスマホを見ながら首を傾げている。
先生はたまに彼女が出来る・・・私が最初に会った彼女さんみたいな女の人もいたけど・・・
「今回の彼女さんはお会いしていないので分かりませんが、大人しい人って言ってませんでしたっけ?」
「大人しいっていうか控え目?
欲しい物もそこまで言ってこなくて、お店を通ったら立ち止まって見てるような子で。」
「そうですか・・・。」
「連絡が来ないし、もう終わりかな。」
先生は毎回こう言う・・・。
「まだ数日ですよね?
また来るんじゃないですか?
いつも数日後にまた来るパターンじゃないですか。」
「う~ん・・・。
でも、もう終わったんだなと思う。
なんでか分からないけど、数日連絡が来ないと去ったんだなと思うんだよね。」
「また事務所に押し掛けられると対応が大変なんですけど。
私が取ったとか言われるんですよ?」
数日間連絡がなくなると、先生はその人とはもう会わなくする。
すると事務所にまで押し掛けてくる。
先生の一人暮らしの家は知らないから。
「悠ちゃんと何かあるわけないのにね?
中学1年生の頃から知っているのに、そんな風になるわけないのにね。」
「そんなことより、先生に選ばれるということは私が良い女ではないということなので、何も嬉しくありませんから。」
先生は私のことを女とし見ていない。
それはそうだった。
私は頑張り方を知らなかったから。
彼女とは数日で別れることが多かったのに、私は何も出来なかった。
2人でご飯に行ったこともない。
それでも先生のことは好きで・・・。
時間は掛かっても、時間が許す限りは頑張っていこう・・・
そんな風に思っていて・・・。
でもそれも何人目かの彼女さんを見て、辞めた。
「先生、本当に女を見る目がなさすぎます!」
「そうかな?
女の子はみんなあんな感じじゃない?
悠ちゃんは付き合うとあんな感じじゃないの?」
「大学1年生の時に付き合っただけなので、よく分かりません。」
「そうなんだ?
あんまり彼氏とか欲しくないの?」
「別にいりませんね。
私には彼氏はいりません。
そんな人がいなくても楽しいですし、幸せです。」
そう思った。
本当にそう思った。
先生と“カップル”になれなくても、こうして一緒に仕事をしていられればいい。
“重い女”だとは知られないまま、先生から“重い女”だとは思われないまま。
私が大好きな家族を“重い”と思われないまま、このままでいいと思った。
先生のことが好きだから。
先生のことが大好きだから。
先生を不幸にするのは私ではない誰かであって欲しかった。
「悠ちゃん?大丈夫?」
少しだけ停止していた私の肩に、先生が少しだけ手をのせた。
その手を少しだけ見て・・・
やっぱり少しだけ想像してしまう・・・。
あの彼女さんだけではなく、たまに事務所に来る他の彼女さんからも聞いていたから。
先生が彼女さんにどんなことをどんな風にして、愛していたのか・・・。
私は聞きたくもなかったのに知ってしまったから。
肩に感じる先生の手を少しだけ感じながら、多めに空気を吸った。
“しっかりする。
今は、しっかりする。”
先生のことを想いながら、先生に愛されてみたかったと思いながら、今日も先生と仕事をする。
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