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それから数日後・・・。

そろそろ先生に我が家のことを話そうと思っていた。

先生はお母さんのことだけは知っているから話すのを忘れていたけど・・・。

またお父さんが入院などになると手続きやお母さんの通院などもある。




前の事務所では面接の時にその話をしていた。

だからか、一般企業では内定をなかなか貰えなかった。

その時に何気なく思い付いたのが法律事務所だった。




“先生”のような人が“先生”をしている法律事務所があれば・・・そう思い求人を探したら、あの所長とすぐに出会えた。




とても優しい人で・・・私が“先生”の事務所に行くと言った時は喜んでくれていた。

“ここにいるより絶対に良い”

そう言って、みんなで送り出してくれた。




「先生、今日少しお時間ありますか?」




私が先生に話し掛けると、先生は優しい笑顔ですぐに頷いてくれた。

いつもの優しい笑顔に安心し私も笑顔を返した。












そんなやり取りをした数時間後・・・

企業法務を担当している先生が急に他の弁護士先生の部屋に行き、女性を1人連れて部屋に戻ってきた。




不思議に思いながらも女性にお茶を出し、私は仕事を続けていると・・・。




「夫からいきなり離婚と言われて・・・っ!!

すぐに家を出ていけと、そう言われて!!

子どももまだ小さいのにそんなことを言われて・・・!!」




女性が泣き出しながらそう叫んだ。

働いて数日だけど先生が個人の案件を担当するのは初めてで・・・。

それもこういう案件で少し驚いた。




「さっきの女性の弁護士さんにお願いしたいです・・・!!」




女性が泣きながらも先生を少し睨んだ時、先生はいつもの優しい笑顔で笑った。





「僕の祖母は、裕福な家に生まれ婚約者がいました。

その婚約者に妊娠させられてしまい、家が潰れると婚約者に捨てられ・・・僕の母が5歳の時に亡くなりました。」





当たり前だけど初めて聞く話だった。

だから先生のお母さんは動物にはお金を掛けない人なのだとこれで分かった。





「僕は独身ですし、僕自身は貴女のお気持ちを分かることは出来ませんが、幼い頃から母にこの話を聞いております。」





女の人が少し冷静になり先生を見詰めた。

そんな女の人を先生も見詰め、優しい笑顔で笑う。





「離婚届を記入しましたか?」




「まだです・・・。

それだけ突き付けて仕事に行きました。」




「まだ記入しないでください。

そして、何を言われても家から出ないでください。

あなたが家を出てしまうと、それが不利になることもありますから。」




「家にいていいんですか・・・?」




「はい、まだ婚姻は継続されていますので。」




先生が優しい笑顔のまま続ける。




「その間に準備をしましょう。

費用は掛かりますが調査員をつけさせます。」




「調査員・・・?」




「旦那さんのことを調査します。

なるべくピンポイントで調査をしたいので、旦那さんの持ち物などを徹底的に調べてください。

スマホやパソコンもそうですが、パスワードで開かない場合は無理をしないように。

持っているカード類に不審なお店の物があるか、毎日のレシートやカーナビの履歴、クレジットカードの明細書なども。

家中をひっくり返して探してください。」




優しい笑顔のまま先生がそんなことを言っていて、それには驚いた。




「そんなこと、私に出来るか・・・。」




不安そうな顔の女性・・・今にも泣きそうな顔をしている。

そして、先生はいつもの優しい笑顔で言った・・・







「しっかりしましょう。

今は、しっかりしましょう。」






そう言った・・・。

“先生”がそう言った・・・。

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