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薄暗い店内・・・

先生のお母さんがやっているというスナックに、先生が数人を連れてきてくれた。




「随分と可愛い子入れたね!!」




先生のお母さん・・・“ママ”がそう言って、煮物をテーブル席のテーブルに置いてくれた。




笑顔で会釈をした私を“ママ”が少し見て・・・




「あれ?ネコの子?」




「あ!覚えてくださっていましたか!

そうです、ネコの。

元木悠です、先日から先生の事務所でお世話になっています。

先生のお母様にもお世話になったのに、お礼も出来ず申し訳ありませんでした。」




「いいのよ!!ネコどうだった?」




「無事に回復して今は元気に飛び回っています。

あの時は本当にありがとうございました。」




私がそう言うと“ママ”は大笑いをした。




「あんな感じにされたら、助けてあげたくなるって!!

したたかで強い女だね、元木ちゃんは!!」




そんなことを言われ少し驚いた。

別に助けて貰おうと思っていなかったから、そう思わせていたのなら結構ショックで・・・。




「ネコって?」




“ママ”がカウンターに戻った後、先生に聞かれる。

先生の元生徒でお兄ちゃんも先輩後輩だったのに、先生のお母さんは先生に私の話をしなかったらしい。




うちのお母さんだったらすぐに言いそうなことなのに、先生のお母さんはそういうお母さんなのだと分かった。




「道で倒れているネコを見付けて。

今にも死んでしまいそうな所で、先生のお母さんが声を掛けてくださって。

知り合いの動物病院やタクシーまで手配してくれたんです。」




「そうなんだ?

母さん、動物にはそこまで感心ないのにな。

動物にはお金を掛けない人なんだよね。

“あれはお金に余裕がある人だけ”って言って。」




近所の大豪邸に住んでいるのに、先生のお母さんはそういう人らしい。




カウンターの向こうで、大きな声でお客さんに怒りまくっている“ママ”を見る。

社長夫人には確かに見えなくて・・・でも、素敵な人なのは分かる。

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