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そんな訳の分からない理屈を言ってきて、流石に慌てる。
「私、良い女じゃないので!!!
全然良い女じゃなく、“重い女”だから・・・っ」
そう叫んだのに・・・
優しさなんて一切ないくらい強引に入ってきて・・・
私の初めては信じられないくらい激しく、終わった。
それも、中に思いっきり・・・。
信じられないことに、そんな感じだった。
“先生”はどこにいったのかと思うくらい、そんな感じだった。
「“先生”、これは最低だから・・・」
ベッドの上でまだ激しい呼吸を繰り返している37歳独身、弁護士バッジを持っている“先生”に言う。
「“先生”はやめてよ・・・」
「わざと“先生”って言ったの!!
どうするの!?最低!!!
凛さんのおばあちゃん、こういうので苦労したって不倫や離婚案件のクライアントには説明してるのに!!」
「俺は男だからね。祖母は女性だったから。」
「私は女なんだけど!!!」
「うん、だから結婚しよう。
すぐに結婚しよう。」
そんなことを嬉しそうな顔で言ってきて・・・
「しっかり考えてって言ったのに!!!」
「去年の12月から俺はずっとしっかり考えてきたし、ずっと頑張ってたよね?」
「2人の問題じゃないじゃん・・・。
結婚って、そんなに簡単な問題じゃないじゃん。
先生・・・私と結婚したら幸せになれない。
だって、先生に選ばれたってことは私は良い女じゃない。」
「・・・悠ちゃんは俺のことを男としては好きじゃない?」
それを聞かれると、黙る。
まだ呼吸が整いきれていない37歳独身、弁護士バッジを持っている実家も自分も大金持ちの男。
顔も良くて仕事も出来て、性格まで良い。
そんな先生を睨みながら言う。
「先生のことは男としても好きだけど!!
アンタ何でそんなに女を見る目がないの!!?」
「それを言われると困るよね。
でも、悠ちゃんが俺のことを男としても好きならよかったよ。」
「全然良くないから!!
しっかり考えてよ!!
私“重い女”なの!!」
「何も重くなかったけど。」
「そこじゃなくて・・・!!!」
これを大真面目な顔で言われると笑ってしまう。
「今の時間、お父さんだけでも起きてるかな?
もう挨拶に行こうか。」
「“先生”待って!!!
本気でしっかり考えて!!!」
「考えてるよ?」
「・・・分かった、せめて週末にして。
私にもしっかり考えさせて。」
*
“私にもしっかり考えさせて”
そう言ったら先生は頷いていた。
確かに頷いていた・・・。
なのに、何が起きたのか・・・。
「私事ですが、元木さんとお付き合いしましたので誰も取らないようにお願いしますね。」
月曜日の朝のミーティング・・・。
そこで先生がそんな爆弾を落とした。
みんな驚いた顔をしながら私を見て・・・
「元木さんで良かった」なんて発言も結構あって・・・
その後、「元木さんは悪い子に見えないけど、実は何かあるのか・・・?」なんて笑いながらも言われてしまった。
それくらい先生の前の彼女達が良くなかったことを事務所の人達は知っている。
事務所の飲み会に突然乱入してきたり、事務所にも来たり・・・先生がいない時もやりたい放題だったり。
一見大人しそうに見えた彼女でも、数日後に音信不通になったと先生が言っていたり。
とにかく、事務所のみんなが知っているくらいだった。
そんなことを思い返していると、ミーティングが終わってから女の弁護士先生が笑顔で近付いてきて・・・
それに苦笑いで会釈をする・・・。
「元木さんなら良かったよ~!!」
「良くないですよ・・・。
私は良い女ではないと証明されましたから。」
「元木さん良い子じゃない。
先生の前でたまにキャラ変わるけど、そのくらいみんな知ってるし。」
「ここではみなさん可愛がってくれるので、ついあっちも出ちゃいますね。
この人になら何を言って大丈夫という、末っ子の私が家族に対して甘えるみたいなやつが。
あと、私は先生の顔が好きじゃないので。」
「そうなの!!??」
女の弁護士先生が大きな声を出し驚いている。
「格好良いのは分かりますけど、顔は好きじゃないので余計あんな感じになります。」
「まあ・・・先生のお金や見た目重視の女ばっかりだったから、そういうので良いんじゃない?」
そう言われ女の弁護士先生を見る・・・。
「私、大学の時に1度だけ彼氏がいただけで。」
「そうだったね!前にそんなこと言ってたよね!」
「“重い”って言われてフラれました。
付き合って3日で、何もする前に“重い”って言われてフラれました。」
女の弁護士先生が笑いながら私を見る。
「もしかして、それでそれ以降彼氏作らなかったの?」
「それもあります。
確かに重いだろうなと思ったので、積極的には動きませんでした。」
「でも、モテたでしょ?」
「大学1年の時にすぐにサークルの人と付き合ったので、その人から私の重いエピソードを話されてみんな男友達止まりでしたね。」
それには女の弁護士先生に驚かれる。
「そんなに重かったの?」
「重いんですよね~。
私は“重い女”なんです・・・!!
先生は本当に女を見る目がなくて全然嬉しくはないんですけど。」
私がそう叫ぶように言うと、女の弁護士先生は面白そうな顔で笑う。
「先生の秘書も5年目だし、先生は元木さんが重いのに気付いてるんじゃない?」
「それが、“スレンダーなのに”とかいうオジサンみたいな返しをされました。」
「先生37歳だしね・・・。
あと、恋バナとか喋るような女友達もいなさそうだしな。
先生、大学生の頃とかどんな感じだったの?」
女の先生にそう聞かれ、少しだけ考える。
「プライベートで会ったことはないので、恋愛とか女友達とかは全然分かりません。
昔から変わらず“先生”でしたね。」
私が答えると女の弁護士先生は“そんな感じっぽいよね”と頷き、私を見た。
そして、言った・・・。
「中学3年間、個人指導塾の“先生”が葛西先生だったんだもんね?」
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