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俯きながら、両手で持つ缶ビールを眺める。
どんな答えが帰ってくるのか少しだけ怖かった。
「1人でもしっかり生きていけるところだね。」
そんな答えが先生から返ってきて、それには驚いて顔を上げた。
「そうですか?私そんな感じ?」
「そんな感じしかしないよね。
凄い強いし。しっかりしてるし。」
「先生の方が強いし、しっかりしてるじゃないですか。」
「そう見せてるだけだよ。
そう見せるのが上手いだけだよ。
お金持ちの家に生まれて、何の不自由もなく育って、心がそんなに強いわけないよね。」
そう言われ・・・また下を向いた。
「悠ちゃんのことが凄い好きなんだよね。
凄い好きだから、花火の音が終わるまで抱き締めていたい。」
先生が自分の缶ビールをローテーブルに置き、ゆっくりと優しく私を抱き締めてきた。
私が両手に持つ缶ビールごと抱き締めてきた。
「でも、それ以上に・・・」
片手で私の缶ビールを先生が取り上げローテーブルに置いた。
そして、苦しそうな顔で私を見詰める・・・。
凄い、苦しそうな顔で・・・。
「俺の方が7歳も年上だし男だし、きっと俺の方が先に死ぬから。
俺の花火の音が終わるまで、抱き締めて欲しい。」
先生が・・・
いつも冷静で信頼出来て頼りになる先生が・・・
私にそんなことを言った・・・。
驚いている私に、先生が困った顔で笑った。
「俺の方が先に死ぬから。
俺の花火の音の方が先に終わってしまうから。」
「そんなの分からないですよ?
私だって、病気とか・・・。」
「いや、絶対に俺の方が先に死ぬ。」
いつもと全然違う先生に笑ってしまう。
「先生、面白すぎるから。」
「俺死ぬのが怖いんだよね。
何でか知らないけど、昔から死ぬのが凄い怖くて・・・。」
「それは知りませんでした。」
「だからか、誰かが死にそうになっているのを見たりするのも凄い怖い。」
そう言った先生の心臓は、確かに花火の音のように大きくなっているように思う。
それに耳を当てる・・・。
「まだちゃんと花火の音が聞こえてる。」
「抱き締めて欲しい・・・。
抱き締めることは俺1人じゃ出来ないから。
強く見せることもしっかりしてるように見せることも出来るけど、抱き締めてもらうことは俺1人じゃ出来ないから。」
先生がそう言うと、私を強く強く抱き締めてきた・・・。
それは痛いくらいで・・・。
「私は“重い女”なのに・・・。」
「こんなにスレンダーなのに、何が重いの?」
それを言われると笑ってしまう。
そして、笑った私の顔を先生が嬉しそうな顔で見てくる。
先生を抱き締めなかった私だけど、先生は嬉しそうな顔をしている。
「本当に“重い女”か確かめるよ?
しっかり考えないといけないから。」
*
“重い女”なのをどうやって確かめるのかと思っていたら・・・
まさかの、ベッドの上で・・・
「先生・・・っ違うから!!
そういうやつじゃないから・・・!!
オジサンの面白い返しといらないから・・・!!」
「俺37歳だからね。
若い子が言っていることがたまに分からないよね。」
そんなことを真面目な顔で真面目に言って、私の上に跨がりながら次々とスーツを脱いでいく。
初めてのことでも、私にだってこの後の流れは分かるので驚く。
いつもの先生とは全然違って、何かに慌てるように急いでいる。
急いでスーツや・・・
「電気っ!!せめて電気消して!!!」
先生が下も脱ごうとしたので目を瞑りそう叫んだ。
「それは無理、ごめん・・・。
悠ちゃんの姿見たいし・・・。」
そう言われ、目を閉じたままの私のブラウスやスーツを結構強引に脱がしていく・・・
「先生って、こんな感じなの・・・っ?」
「・・・そんなはずはないんだけど、急がないと。
俺が死ぬかもしれないし・・・。」
「どこか・・・病気なの・・・?」
「全然。健康診断オールA。」
もう意味が分からなすぎて笑えてきた。
目を閉じたまま全て脱がされてしまった。
両手で胸や下半身を隠して・・・と思ったら、隠す前に強く強く抱き締められた。
「先生・・・っ苦しい!!
アンタ、どうしたの!?」
「ごめん・・・感無量で・・・。」
様子のおかしい先生に戸惑いながらも、そこは好きな相手だから・・・嬉しくもあって・・・。
「分かってる!?私、初めてだからね!?」
「頭では理解してる・・・。」
「何それ、怖いから・・・っ」
そう言った時、思いっきり口を塞がれた・・・。
手加減とか一切なしで塞いできた・・・。
「・・・っ、先生!!!」
少し口を離された瞬間に私がそう叫ぶと、先生が苦しそうな顔で私を見詰め・・・
「“先生”はやめてほい。」
「・・・凛太郎さん?」
「いや、違うね・・・」
「凛太郎・・・?」
「違う・・・なんだろ?他にはない?」
「葛西さん?」
「それは面白いけど違うね。」
先生が本当に面白そうな顔で笑って、私を優しい顔で見詰めてくる・・・。
そんな先生を見ながら、最後に思い付いた呼び方を呼んでみる。
「凛さん・・・?」
そしたら、先生が怖いくらい真面目な顔になった・・・
「うん、それで・・・。
凛さんか・・・。
そうか、凛さんか・・・。」
先生が小さな声でそう呟き、嬉しそうな顔で私を見詰め・・・
「よかった・・・。
見付けられたみたいだね・・・。
悠ちゃんを・・・。」
そんなことを言ってから、今度は優しく唇を重ねてきた・・・。
少し安心したのが大きな間違いで・・・
「ちょっと・・・っやめてっ!!」
あの優しいキスの後からかなり強引になり、激しいし、なんだかめちゃくちゃにされていて・・・。
「ごめん・・・感無量で・・・」
「それ言ったからって、許されるわけじゃないから・・・っっ」
かなり強引で激しいけど、しっかり気持ち良くて・・・
そういう所は先生らしいなとは思う・・・。
「悠ちゃん、名前・・・」
そんな要望までさっきから何度もされ・・・
「凛さん・・・っ」
先生をこう呼ぶと、幸せそうな顔で笑う。
そんな顔をされると悪い気持ちはしないので笑い掛けると・・・
いきなり、なにがどうなったのか・・・
先生の上に私が乗った・・・。
「何が重いのか俺には全然分からないけど。」
「それ本気で言われると笑っちゃうから・・・」
私が笑うと先生も笑って、両手を私の背中にゆっくりと回し自分の身体の上に倒してきて・・・。
先生の身体の上に倒れた状態で先生が私を強く抱き締め・・・
私の下半身の入口に押し付けてきて・・・
そして、思い出す・・・
「凛さんっ、避妊!!!!」
先生の顔を見ながら叫んだら、先生が怖いくらい真面目な顔で私を見てきて・・・
「俺は男だから。」
「え?はい・・・。
なので、私にリスクが・・・。」
「悠ちゃんが妊娠しても、俺が結婚して死ぬまで一緒にいればいいだけだから。」
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