第3話

・松山航空基地 公安警察中国管区松山局 地下銃器庫


「隊長、どうしでした?は」


マガジンに弾を込めていると後ろから江中のいつものチャラい声が聞こえてきた。


「どうだったと言われてもな、ただ対面しただけだからな…なんとも言えん。ただ、まぁ手慣れだとは直感したよ」


「おやっさんがそう言うなんて珍しいな」


新しく声が聞こえた方にスモークグレネードを投げ渡す。


「三上、俺もたまには言うぞ。というか、お前らもう少し緊張感を持てよな。一応もう少しで出撃の予定だぞ」


「でも隊長、相手は民兵です。我々の相手ではないかと」


奥の方でライフルを選んでいたうちの班でいちばん若くしかもSFPでは珍しい女性隊員の恵川がこちらに聞こえる声で話しかけてきた。


「お、なんだ嫉妬か?」


「隊長キモイです」


「そんな酷いこと言わないでくれよ。それはそうと、長物はやめとけ。取り回しのいいM14辺りにしといたほうがいい」


アドバイスを含めた返事をするとどうやらバトルライフルを探しに行ったらしい。武器庫の奥の方へと消えていた。それと同時に1人また武器庫に入ってきた。


「おやっさん、ちと不味いことになりました。これを」


そう言いながらこの班の中では俺に続いて2番目に経験が多い八上が入ってきた。というか年齢は4、5歳くらいしか離れてなかったはずなんだけどなんでおやっさんって言うのかな…。

まぁそれはそれとして差し出されたボードに挟まれた紙を見る。

そこには公安警察庁の本庁から送られてきた衛星写真が載っていた。


「ドローンか…。こいつは厄介だな…」


「ええ、しかもさらに厄介なのは偵察ではなく攻撃機なところです。両翼に対戦車ミサイルを計4発装備可能。こいつが空からこられたらめんどくさいことになるかと」


「だったらいっその事携帯ミサイルでも持っていくゆか?」


「でも、それLAVに乗ります?」


「場所を詰めればなんとか、行けるだろ」


「ならこれ先に積んどきますね」


話を聞いていたのであろう江中がどこから出してきたのか旧陸自から払い下げられた携帯対空ミサイルを担いでいた。


「で、おやっさん実際のところPSBの特務部隊は。あいつらにはああ言ってましたがもっとなにかあるでしょ」


「そーだな。あれとは戦いたくないな。ACCSとやらが無くても十分強い」


あいつら江中・恵川には言ってはいないが恐らくこの班全員で挑んでも敗北する。あの女の顔は1度見たことがある。数年前、公安警察に移籍する前の旧海自時代に陸自との交流戦で1度見た。異常な戦闘力を持ち格闘戦では誰も歯が立たなかった。射撃能力も高かった。

まさにバケモノという言葉がお似合いだ。


「でも今回は味方だ。まぁ大丈夫だろう。それよりもお前も色々と用意しろよ」


へい、と軽い返事をしたあとすぐに武器庫の奥へと消えていった。

それを確認し靴紐を結び直す。




公安局から配られた端末を確認する。

出撃まであと10分くらいか。

早めに集合地点へと向かい着いた時には既に全員が揃っており、やや遅れて到着した私の方をいっせいに確認し再び各々の用意に戻っていく。

…すごい気まづいな…。

向こうの女性隊員と目が合ったが、殺意が半端ない…。


「少し時間が早いがそろそろ出発するとする。挨拶が遅れたが、この特務任務部隊の隊長を務める松戸だ。よろしく頼む」


先程見た顔が挨拶をし、それぞれの組織から選抜された隊員と挨拶をしている。

SFPの隊員に一通り挨拶した後次にこちらに来た。


「先程は助かった赤井執行官」


「ああ、それは何よりだがまだ戦闘が終了してから数時間しか経ってないだろ。大丈夫なのか?」


「そうだな、正直キツい。だが、セーフティーエリア外で活動をしたことのある指揮官は皆先の戦闘で戦死か負傷でマトモに動けるのが居ないからしょうがない」


「そちらも人員不足がひどいのか?」


「ああ、なんとかやりくりしている状態だ。世知辛いものだな」


お互いに苦笑いしながら雑談をしていると再び公安局から支給されている端末が鳴った。

内容を確認してみると今回の作戦の支援についてだった。


ええと、なになに。


『本作戦は脅威度が高いと判断されたため第一戦闘航空支援隊による航空支援下のもと実施することとなった。

航空支援の要請はACCSを経由してされたし』


こういう通告は直前ではなくもっと早く通告してほしいが、悪い報告でなかったから良しとするか。

これならだいぶ作戦が楽になる。


ちょうど内容を確認し終えたタイミングで隊長である松戸大尉の招集がかかった。


呼ばれた方に行くとそこには随分と豪華な車両達がエンジンをかけた状態で待機していた。


「それでは搭乗していくが、情報の共有を行いたい。我々現地の部隊が掴んでいるのは先ほどのブリーフィングの内容だけだ。」


「じゃあ私から。先ほど大阪から戦闘航空支援隊のJ-2が3機離陸しこちらに急行中、あと10分ほどで現着の予定。航空支援の任務に就く。武装は2機がヘルファイヤ対戦車ミサイルを6発づつと12ミリ機関砲ポッド。残りの一機はサイドワインダーを3発、そして12ミリ機関砲ポッド。ACCSを経由して支援を要請することになる」


「では最後に俺から。」


先ほどSFPの隊長と名乗った男が一歩前に出てタブレット端末をこちらに見せてきた。そこには古びた航空基地に2、3機ほどの白い航空機らしきものが見える。 


「公安警察の衛星が先ほど離陸待機中の航空機を捉えた。おそらくMQ-9。翼にヘルファイヤが2発搭載されてる。現在二機を確認済みだ。」


「であれば陸上防衛軍にこの飛行場への砲撃を要請して見るのはどうだ?向こうさんもいい射撃演出になるだろう。」


「ならうちから要請しておく。おそらく洋上で哨戒している艦からの支援になるがな。」


「一応こちらからも追加でドローンを何機か要請しておく。」


「このほかになにかかくにんしておくことは?」


「ああ、一つ。一応敵はMBTを2両保有しているとのこと。」


「さっきのやつか。ちと面倒だな…。」


「破壊は可能なのか?」


「一応ACCSで破壊は可能。」


「なら。問題はないな。」


「では総員搭乗!」


合図に合わせそれぞれ割り当てられた車両に乗る。車両の陣容はどれも旧陸自からの払い下げ品ばかりだったが、これは…驚いた。

LAVが3両、12ミリ機銃付き。そして高機動車が2両。恐らく回収用にWAPC96式装輪装甲車が3両、そしてRCV87式偵察警戒車が1両待機していた。


「驚いた顔をしているな、赤井執行官。」


後ろから松戸大尉の声が聞こえた。


「ええ、確かに驚いた。こんなに車両が用意できたとわ。」


「これが今出せるウチの限界だよ。そっちに若いのが数人乗ると思うが、頼んだ。」


「ああ、わかったよ。」


挨拶を交わしたあとLAVに乗り込む直前SFPの隊長から無線が入った。


「先程太平洋を哨戒中の駆逐艦『あやなみ』より入電があった。巡航ミサイルを飛行場に対し発射し、命中。公安警察の衛星が飛行場が破壊され航空機が破壊されたのを確認した。」

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PSB 法務省公安局特務任務部隊 @kokenokokeshi

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